おっちゃんのスタジオ用語(あ行〜か行)

おっちゃんが参加した録音の様子をご紹介している「おっちゃんの仕事場探検」などの中で分からない用語があったら、以下をスクロールしていただくか、トップページにある目次の中から気になる用語をクリックしてみてください。一応、おっちゃんにはできるだけ分かりやすく解説してもらったつもりですが、それでも分かりにくい場合や他に知りたい用語などありましたら「メール」「Web Clap」などにてお気軽にご連絡ください♪

 

 

 アカペラって?

特にスタジオ用語というわけではありません。「アカペラ」という言葉を初めて聞いた時は、てっきり「アカ・ペラ」だと思いましたが、実は「ア・カペラ(a cappella)」なのです。この「cappella」とは、イタリア語で「礼拝堂」とか「チャペル」の意味らしいです。ずっと昔、宗教音楽は無伴奏で歌われていたので、主に無伴奏の合唱のことを「ア・カペラ」というようになりました。でも現在では、楽器の場合にでも使われています。

 

 

 アコースティック楽器って?

 

 

アコースティック(acoustic)とは、「音響学の」とか「聴覚の」とかいうような意味らしいですが、この場合は「電気の力を借りない楽器」というように捉えればいいでしょう。詳しくは、「生ギター・生ピアノ・生楽器って?」の項を参照してくださいね。

カタカナ表記としては、「アクースティック」の方が近いと思うのですが、普通は「アコースティック」と言われてます。 現場では「アコピ(アコースティックピアノ)」、「アコギ(アコースティックギター)」なんて言ったりします。いかにも日本的な省略ですね。

アコースティックなサウンドというと、電気的なエコーではなくて、ホールなどの、自然な残響を含んだサウンドを指します。

 

 アゴアシって?

特にスタジオ用語というわけではありません。
「アゴアシ」とは「顎足」のことなのですが、「顎」は食べ物・弁当代のような意味から、宿泊費までを意味する場合もあります。
 
「足」は読んで字のごとく、足代…つまり、交通費です。
 
使い方としては、演奏旅行などの場合の、ギャラ以外の必要経費というようなな意味で使われることが多いと思います。たとえば、たった1日だけの仕事で、ちょっと遠くに行かなければいけない場合などに「ギャラよりもアゴアシの方がかかりすぎてさぁ」という風に言ったりします。

 

 頭出しって?


この場合の「頭」とは、ある曲の最初の部分という意味です。たくさんの曲が入っているテープから必要な曲を探し出すのはテープレコーダーのカウンターを使うのですが、こういった作業の手際の良し悪しはけっこう大切で、スタジオのアシスタントが下手だと余計な時間がかかってしまいます。 劇伴はもちろんですが、特にCMの場合は時間が厳密なので、映像に音楽を合わせてみる時などは、この頭出しがほんの少し狂いも許されないので大変です。

PICK UP BBSの「スタジオのアシスタント」も参照してください。

 

 当てぶりって?


これはテレビ関係の用語だと思います。本来は映像と音声は同時に撮るのですが、何らかの都合で先に音声だけ録って、あとでそれに合わせて映像をとる…ということがあります。つまり、音に合わせて(当てて)演奏してるフリをする…ということで「当てぶり」と言っています。場合によっては、実際に演奏してる人とは別の人が当てぶりを担当するなんてこともあったりします。


 後入れって?


「後入れ」というと、ダビングと同じように使われることが多いのですが、厳密には意味が少し違うかと思います。 ダビングというのは、何か先に出来ているものに、音を被せたり重ねたりすることで、その先に入っているものは必ずしも音ではなく、映画のダビングの場合は映像だったりします。 一方、後入れの場合は、本来は同時にやるべきものを何らかの理由で別に…つまり後で入れるということだと思います。

その、後入れになる理由としては色んなケースが考えられます。たとえば、スタジオのキャパの問題で全員が入り切れないとか、その時間にメンバーが揃わない、ミキサーさんの都合で別々に録りたい、あるいは演奏する上で、楽器の持ち替えが間に合わない、フレーズが難しくて後でゆっくりやりたい…などでしょうか。

別項「クチパク」も参考にしてみてください。


 穴って?

来るはずのミュージシャンが何らかの理由でスタジオに来ないことを「穴が開く」という風に言います。これは、スタジオ業界だけではなくて、芸能界全般…いえ、私たちのごく身近な生活の中でも使うようですね。

インペク屋さんが最も恐れて嫌がるのが、この「穴」です。穴が開いてしまう原因としては、スタジオの仕事のオーダーは電話でやることが多いので、言い間違い・聞き間違いなどによることが考えられます。また、それ以外としては、ミュージシャンが受けた仕事を忘れてしまったとか、日にちを勘違いした…などということもあります。

スタジオの仕事は、正式の契約書などを交わすことはほとんどなく、大抵の場合は電話でのやり取りのみで終わってしまいます。ですから「言った」「言わない」」という食い違いは結構あります。あとでモメたときの証拠のために…と、録音をするようなケースもないことはないのですが、「ほら、こう言ったじゃないか」などと証拠を突きつけたところで、かえって後々の人間関係に悪影響を及ぼすようなことにもなりかねないので、難しいところですね。

 

 

 アレンジャーって?


編曲者。もともとは、ある曲を別の形で演奏するように作り変えることを「編曲する」とか「アレンジする」と言ってました。でもスタジオでアレンジャーという場合は、作曲家が作ったメロディをオケの伴奏がついた形に作り上げることを指す場合が多いですね。もちろん、本来の意味でも使われますよ。曲がヒットするか、しないかは、アレンジャーさんの力量による部分がとても大きいと思われます。

でも、そのわりにはあまりスポットライトを浴びることが少ないのは残念ですね。メロディを作るのは誰でも出来ますが、アレンジは特別な教育や訓練を受けた人でないと出来ません。

 

 

 アンコって?

アンコというのは、饅頭やお餅に入っている餡から来ているのですが、演歌などの途中に、本篇とは別に一般的によく知られた民謡などが挿入されることがあって、こういうのを業界では「アンコ」などと言っています。まあ、間に挟まるということなのでしょうね。

実はこの「アンコ」入りの歌謡曲は、昔から結構あったようです。ほとんどは民謡ですが、中には童謡や唱歌の場合もあります。大体は回想的な効果を狙っているケースが多いですね。「佐渡おけさ」がアンコで入る、ひばりさんの曲もあったかな〜?(題名が思い出せん…)。アンコに民謡が入っていると、少なくともその民謡の地方だけでも、ある程度の売り上げが期待できるなんて事もあるのかも知れないです。御当地ソングに近いものがあるかも、ですね。
 
そういうのとは別に、私が時々やっている仕事で、そのアンコに詩吟が入るというのがあります。プライベート版なので市場には出ないのだと思いますが、オリジナルの演歌風の歌のアンコに「川中島」などのスタンダードな詩吟の一節が入ります。多分、そういう詩吟のグループというか一派があるのだと思いますが、詩吟というだけに、どちらかというと年配の方が多いようです。喉を鍛えていらっしゃるだけあって、どの方もなかなか美声の持ち主で、歌もお上手です。 
 
ただ、この手のアンコ入りの曲のアレンジは、ちょっとばかり面倒な面もあるようです。つまり、詩吟というのは、本来あまりテンポとかリズムが、いわゆる洋楽のようにはハッキリしていないので、それを採譜してオケのバックをつけるというのは、大変な作業のようです。あと、本篇のキーと必ずしも一致しない場合もありますし、当然テンポも違ってきますので、その調整も工夫が要りますね。

 

 アンサンブルって?

特にスタジオ用語、というわけではありません。大編成のオーケストラに対して、10人以下の比較的少人数の合奏のことを指す場合が多いようです。でもスタジオでは、小編成でも「オケ」ということが多いです。

 

 EQって?

イコライザーのことです。ある特定の周波数帯を持ち上げたり、逆にレベルを落としたりして、音色を調整する装置で、単体でもあると思いますが、アンプやスタジオの卓に内蔵されていることが多いと思います。どちらかと言えば、単語の意味の逆の使い方をされるケースの方が多いような気がします。

 

 

 委託版CDって?

レコード会社で製作するCD(昔だとレコード)は、原則として自社で企画制作するのですが、外部からの注文で「プライベートレコード」のようなものを作ることも意外と多いのです。地方でご活躍の歌い手さんとか、自治体の市歌みたいなのをはじめ、社歌や校歌、あるいは地方の市町村で盆踊りなんかで使うような「○○音頭」とか、色々とあります。これらを総称して、「委託版」と言ってます。

この手のCDは市場に出回ることはほとんどありませんが、アレンジャーからミュージシャン、そしてエンジニアまで、れっきとしたプロの技術で作られるわけですから、品質的には市販のものと変わりありません。ただ、通常のCDのように、「どうしても売らなければいけない」という意識はあまりないので、全体にのんびりとした雰囲気でやってます。ミュージシャンのギャラは、通常と同じように支払われます。この委託版のことを「プライベート版」とも言い、その略で「P版」などとも言ったりします。

 

 

 板つきって?

スタジオ用語ではありません。コンサートなどで、緞帳が上がる前…もしくは照明が入る前から、ステージにスタンバイしていることを言います。クラシックのコンサートは、板付きではなくて、ステージが明るくなってから、ぞろぞろと入って来ることが多いですね。

 

 

 イチスタって?

 

「第1スタジオ」のことで、当然ながら「2スタ(ニスタ)」「3スタ(サンスタ)」という風に続きます。スタジオによってはアルファベット順のところもあって、「Aスタ(エースタ)」「Bスタ(ビースタ)」などと言ってます。

また、場所によっては「506スタ」「101スタ」なんてのもあって、これは習慣的に「ゴーマルロクスタ」「イチマルイチスタ」という風に言います。スタジオがたくさんあるところは、こんな風に言う場合が多いですね。最初の数字は、そのスタジオのあるビルの「階」を表すことが多いようです。

似たようなので「リハーサルルーム」なんかは「イチリハ」「ニリハ」などと言ったりして、それぞれ「第1リハーサルルーム」「第2リハーサルルーム」のことです。ちなみに「イチカメ」「ニカメ」という場合は、テレビのカメラですね。

 

 インターって?

「interlude」…「間奏曲」の意味ですが、スタジオでは歌モノの「間奏」の意味で使われることが多いです。

 

 

 イントロって?

前奏「introduction」のことで、海外でも「intro」という風に略すことはあるようです。これはごく普通の用語なのですが、最近は「アウトロ」などという言葉を見かけることが多くなりました。

多分「イントロが前奏だから、後奏はアウトロでいいだろう」という、比較的安易な発想から誰かが言いだした言葉だと思われます。

 

 

 インペク屋さんって?



元はインスペクター(inspector:検査官・指導主事の意)から来ているのですが、スタジオでは「ミュージシャンの手配をする人」を指しています。CDのブックレットには「コーディネーター」などと書いてあって、何となく格好よく聞こえますが、同じ意味です。

アレンジャーや作曲家の希望を聞いて、それに沿うようにメンバーを集める仕事は、クォリティの高いレコーディングを行うためには、かなり重要なポストになります。大勢のメンバーのスケジュールを調整するのは、大変な作業だと思います。

インペク屋さんの更に詳しいお仕事内容については、ぜひ別項の「インペク屋さんのお仕事 Q&A」をご覧ください。

 

 

 ウスメロって?



「薄メロ」と書くべきなのかも知れないですが、メロはもちろんメロディのことです。これは、カラオケのバックにシンセやアコーディオンでガイド用に歌のメロディが入っていますが、あれをカラオケ業界(?)では「ウスメロ」と称しています。 あくまでもガイドなので、薄く(弱めに)入っているので、文字通り「薄メロ」というわけです。

実は、カラオケだけではなくて、昔の流行歌なんかを聴くと、アコーディオンやクラリネットなんかで歌のメロディが入っていることがよくあります。昔は歌も同時に録っていたので(同録を参照してください)、あれは歌い手さんのためのガイドだったのでしょう。

このウスメロを演奏する場合は普通とちょっと違って、できるだけ無表情に淡々とやることになっています。歌につられてルバートするようなこともなく、行儀よく譜面通りにやらなければいけないので、耳に馴染んだ曲なんかをやる場合は、けっこう難しかったりします。

 

 

 打ち込みって?

コンピュータ上で作られた音楽、またはその入力作業を「打ち込み」と称してます。残念ながら、現在のテレビやラジオで流れている音楽は、この打ち込みの割合がとても高くなっています。ポップス系の歌のバックは、この打ち込みだけのものが大半ではないでしょうか。

コンピュータ音楽を入力するのは、ピアノが弾ける人だったら、MIDIのキーボードから楽器を弾くのと同じように入力できますが、楽器が全くできない人でも、極端な場合は、楽譜が全く読めない人でも、パソコンのテンキー等を使って入力することができます。一見、面倒そうなこの方法も、慣れた人だとものすごいスピードで入力していきますので、傍で見ていると、まさに打ち込んでいるという感じがします。

アニメの劇伴なんかは、この打ち込みと「生オケ」、つまり普通のオーケストラをうまく組み合わせて使っていることが多いです。

 

 

 絵合わせって?

「絵」と云うのは、もともとは映画の映像のことだったのですが、最近ではビデオの方が圧倒的に多くなりました…というよりも、フィルムを映写できるスタジオがなくなってしまったようです。

絵合わせと云うのは、この場合は音楽を映像に合わせる…つまり、シーン全体の長さや途中のキッカケを、テンポなどを微調整しながら合わせることをいいます。 時には、楽譜を一部カットしたり、逆に追加したりすることもあります。

フィルムスコアリングの項も参考にしてみてくださいね。

 

 

 エコールームって?

楽器や歌声を録音する場合は、普通は適切なエコー、つまり「残響」をつけます。よく響くホールでの録音だと、自然の残響を生かすことが出来るのですが、スタジオは響きがデッドなことが多いので、人工的にエコーをつけることになります。
 
最近では、ほとんどが電気的な処理によってエコーとつけていることが多いのですが、以前は「エコールーム」と呼ばれる、コンクリート張りの部屋などを使っていました。風呂場で歌を歌うと、よく響いて気持ちが良いですが、あれと同じことで、このエコールームでスピーカーから音楽を流して、それを別のマイクで拾う…という、今から思えば、けっこう原始的なことをやっていたことになります。
 
予算の都合などでエコールームがないスタジオでは、トイレをエコールームの代わりに使っているところなどもあって、本番中に誰かがそのトイレを使ってしまってNGになった…などという笑い話もあったようです。

 

 

 ADって?

いわゆる「アシスタントディレクター」のことです。テレビ局などでは、ディレクターは副調室コントロールルーム)に座っていて、そこからフロアにいる演奏者や演技者に、色々な指示を出します。それらの指示を、フロア側で受け取って演奏者や演技者に伝えたり、プレイヤーとのコミュニケーションを助けたりするのがADの役目です。別項「FD」も参考にしてください。

 

 

 SEって?

 

「Sound Effect(音響効果)」の略でしょうか。昔から使われている「擬音」というのに近いこともありますが、擬音が何か別の道具(よく知られている方法としては小豆を転がす…など)で波の音を出したりするのに対して、SEの場合はそれ以外に、実際の音(いわゆる現実音)を録音したものや現実音以外(たとえばシンセで作った電気的な音)のものも含まれます。
 
コンピュータ関係でSEといえば、システムエンジニアですね。

 

 

 エスニックパーカッションって?


スタジオでは、大太鼓・小太鼓・シロフォン・シンバルのような、ごく普通にオーケストラで使われている打楽器を「クラシックパーカッション」と呼んでいます。それに対して、ボンゴ・コンガ・マラカスなど、中南米系の打楽器を「ラテンパーカッション」、それ以外のアフリカ・アジア・その他の各国の民族系の打楽器を「エスニック・パーカッション」と呼んでいます。 ということは、その種類は無限にある…と言っても間違いではないでしょう。

日本の太鼓類もこれに入りそうな気がしますが、スタジオでは「和楽器」と云って、別扱いにしています。別項「和楽器」も参照してください。

 

 

 NGって?

録音の本番で、うまくいくと「OK」が出るのですが、何らかの理由で駄目が出るのを「NGが出る」などと言います。多分「No Good」の略でしょう。

 

 

 FDって?

「フロアディレクター」のことですが、「AD」とほとんど同義語ではないかと思われます。コントロールルームに対して、スタジオ側…つまりプレイヤーがいる方を「フロア」とも言うのですが、アシスタントディレクターは普通この「フロア」側にいるので、こんな風に言うのだと思います。

 

 

 MAって?

これは「エムエー」と読むそうです。何の略なのか分かりにくいのですが、どうやら「マルチ・オーディオ」の略らしいです。でも「マルチ・オーディオ」と言われても、これも何のことやら分かりにくいですよね。実は、ドラマや映画などの映像に、効果音・音楽・セリフ・ナレーション…など、音声(オーディオ)関係を乗せる作業を「エムエー」と言ってるんだそうです。

ただし、 この場合の「マルチ・オーディオ」というのは和製英語らしいので、「エムエー」というのは日本でしか通用しないのでしょうね。

 

 

 MCって?

「Master of Ceremonies」の略らしいです。司会者のことで、スタジオ用語というわけではないのですが、テレビ番組の収録なんかでは、使われることがあります。

 

 

 M−18って?

 

この「18」という数字は一例ですが、この場合だと「音楽−18番」くらいの意味でしょうか。劇伴の場合は、1曲ずつに曲名をつけることはあまりせず、順番に番号を付けるだけのことが多いのです。

録音する時には、どの音楽だったか分からなくなる恐れもあるので、指揮者か作曲家かディレクターの誰かが、曲の前に「音楽1番!」とか「エム・いち!」とか叫ぶことが多いです。

 

 

 エレキピアノって?

「エレキピアノ」という場合は、普通はアメリカのフェンダー社製の楽器を指します。 「ピアノ」という名前がついていながら、発音の装置は、どちらかというと音叉に似ています。つまり、電気を使っていても、発音装置は打楽器に近いわけで、それを電気的に増幅しているわけです。ジャズやポップス界ではとても愛用されて、現在のスタジオでも必ず用意されています。

「 エレキピアノ」というのは日本独特の言い方で、英語では「フェンダーピアノ」でしょうか。ちなみに、「エレキ」という、なんとも大時代的な言葉がつく楽器としては、エレキギター、エレキベース、エレキチェンバロ…などが一般的ですが、他にも色々あったようです。

 

 

 エンジニア(ミキサー)って?


 


「ミキサー」というと、どうも料理で使うあの機械を連想してしまいますが、そうでもないみたいですね。 ここでいうミキサーは、古い辞書には載っていないので、英語としても比較的新しい言葉なのだと思います。料理で使うあれをミキサーというのは和製英語で、実際は「blender」とか「liquidizer」とかいうらしいです。

スタジオでいうところのエンジニア(ミキサー)とは、何千というスイッチが幾何学模様みたいに並んでいる「卓」の前に座って、各楽器の音色を決めたり全体のバランスを調整したりします。言ってみれば飛行機の機長、厨房のシェフみたいな役割を担っています。 スタジオ録音で、このミキサーさんの役割はきわめて重要です。プレイヤーを生かすも殺すも、ミキサー次第…なんてよく言われます。

実際、音楽を扱うエンジニアには、技術屋さんとしての専門的な技術や知識以外に、鋭い耳、音楽に対する深い理解とセンスが要求されます。テレビ局、放送局、レコード会社などでは、そのスタジオに所属するミキサーが担当しますが、それ以外では、アレンジャーは、自分の信頼できるエンジニアを指名することが多いのです。プレイヤーも、優秀なミキサーさんが担当だと、顔を見ただけで安心して演奏できる…というようなこともあるのです(もちろん、その逆も…)。また、そのエンジニア(ミキサー)さんの手足となって働く「アシスタント」と呼ばれる人が1名もしくは2名いますが、この「アシスタント」に関しては「PICK UP BBS」「AD」「FD」を参照してください。

 

 

 オーバーホールって?

特にスタジオ用語という訳ではありません。最近は一般的に「修理」ということをあまりしなくなってしまって、具合が悪くなったり、飽きてしまうと、すぐに捨てて新しいものを購入する傾向にあるように思います。でも、昔は時計なんかでも何度も分解掃除に出して、大事に使っていたものですね。オーバーホール(overhaul)とは、その分解掃除、つまり総合点検修理のことです。

フルートの場合のオーバーホールというと、ネジ1本・バネ1本までバラして、必要であれば交換し、タンポ(キーで穴を塞ぐ時に直に穴に当たる柔らかい部分)の交換や調整をし、本体(管)も傷や凹みを直し、錆び、汚れを取って、綺麗に磨き上げると、ほぼ買ったときと同じ状態になります。ただし、料金もかなり高くて、安い楽器を1本買うのとあまり変わらないこともあります。

 

 

 おかずって?

特にスタジオ用語というわけではありません。クラシックの世界でも使われている言葉だと思いますが、主旋律を「主食」だとすると、その合いの手に入ってくるフレーズを「おかず」というわけです。オブリガートはまた別ですね。オブリガートみたいなのではなく、まさに「合いの手」みたいなのを「おかず」と称するようです。演歌のアレンジの場合などは、この「おかず」のつなぎ方がとても重要になってくるようです。

 

 

 オケって?

オーケストラのことを「オケ」というのは随分と前からのことで、「あそこのオケは給料が最悪でさぁ」とか、オケ関係者がよく云ってました。

スタジオで「オケ」というときは、編成の大小とはあまり関係なく、複数の楽器の集団を指していることが多いようです。全くの打ち込みの音楽にダビングする時でも、「では一度オケを出しますから…」などと言ってます。

 

 

 押すって?

収録時間が予定より延びることを「時間が押す」、あるいは単に「押す」と言います。普通「押す」というのは他動詞なのですが、この場合は自動詞として使われるのが面白いですね。こちらも合わせて読んでみてくださいね→押すアレンジャー

 

 

 音合わせって?

音合わせというと「チューニング」のことのように聞こえますが、スタジオで音合わせというと、どちらかといえば「譜読み」と同じ意味で使われることが多いです。楽譜のチェックやマイクのバランスの具合をみながら、取りあえず音を出してみる…という感じでしょうか。

こちらも読んでくださいね→押すアレンジャー

 

 

 音決めって?

↑の音合わせと似たよう感じなのですが、こちらはマイクのレベルをチェックするために、各楽器の音を出してみることを指します。

マイクのレベルというのは、たとえばフルートを録音するレベルでドラムを叩いたりしたら機械がぶっ壊れることは間違いありませんし、ドラムのレベルでフルートを吹いたら、おそらくはほとんど何も聴こえないはずで、各々の楽器によってレベルが随分と違います。また、同じ楽器でもプレイヤーによってもレベルは違ってきますし、同じプレイヤーでも、場所が違えば決して同じようにはいかないので、その辺りをチェックしてバランスを決めるのが、音決めです。

こちらも読んでくださいね→押すアレンジャー

 

 

 お囃子って?

特にスタジオ用語というわけではありません。まず「お囃子」って、一般的には芸能の伴奏の音楽を指すことが多いですよね。でも、スタジオで「お囃子」という場合は、民謡や音頭などの時に「合いの手」を入れる数人の女性のことを指すようです。大体は3人ですが、ときには2人のこともあります。


 帯ドラマって?

テレビドラマで、毎日・同じ時間帯に放映されるものを「帯ドラマ」と言ってます。代表的なのは、「朝ドラ」と言われてる、NHKで朝8時15分から放映されている「連続テレビ小説」でしょうか…。あ、この「テレビ小説」というのは、新聞に毎日連載されている「新聞小説」から来ているのではないか…と思います。

 

 

 OVAって?

特にスタジオ用語というわけではありません。「オリジナル・ビデオ・アニメ」の略だと思われます。ビデオソフトというと、テレビ番組や映画をビデオ化したものが多いのですが、これは最初からビデオの為だけに作られたオリジナルの作品のことをいうようです。

 

 

 オペレーターって?

スタジオで言うところのオペレーターとは、シンセサイザーのオペレーターを指します。シンセが登場して間もない頃は、扱いが複雑な上に楽器も大きくて高価だったので、プレイヤーさんやアレンジャーさんが個人で持っているというケースは少なかったのです。そのため、貸し楽器屋とオペレータがセットになった様な人達が結構活躍していたものだ。
 最近では、シンセの価格もそんなに高くなくなり、扱いも以前に比べれば簡単に成った為に、専用のオペレータと云うのは、かなり少なく成ってしまったようだ。

 

 

 オンマイクって?

「オンマイク」と云うのは、簡単に云うと「マイクに近寄ること」でしょうか。厳密にマイクとの距離が何センチ以内…とかいう決まりはありませんが、相対的なものでしょうね。

オンマイクにするメリットとしては「目的の音以外の音が入りにくくなる」ということでしょう。事実、周りに大きな音を出す楽器(金管や打楽器)などがいる場合は、オンマイクにする必要があります。

デメリットとしては、ダイレクトに入ってくる音ばっかりで残響・反響までは拾わないので、どうしても生っぽい音になってしまうと云う点です。その場合はエコーをつけるなど、電気的な処理で補います。それから、例えばフルートの音は、楽器の筒先…つまり足部管の方から音が出るもののように思われ勝ちですが、実際は歌口や途中の穴から、あるいは楽器本体からなど、色んなところから出ています。だから、あまりマイクに近付けると、その何処かに片寄ってしまって、バランスの悪い音になってしまうと云うこともあります。

民俗系の楽器は、もともと音によって強さにバラつきが大きい上に、オカリナなんかは楽器の裏側から出る音もあるので、オンマイクで録るとかなりムラが出ると思われます。

皆さんがカラオケなどを歌われる時の手持ちマイクなんかは、典型的なオンマイクでしょうね。ああいうマイクは感度が悪いように作られていて、うんと近づかないと、入らないようになっているので、周りの雑音が多少うるさくても拾うことがありません。

オンマイクの逆は、オフマイクでしょうか。でも、こちらの方はあんまり使わないみたいですね。

 

 

 カウントって?

クラシックの場合の曲の始まりは、指揮者が合図をするほかに、演奏者同士で目くばせをする、肩や背中を大きく揺らせてタイミングを計る…など、微妙な動きの合図で始めることが多いのですが、スタジオでやるようなポップス系の曲では、指揮者またはドラムなどが、「ワ〜ン・ツ〜・ワン・ツ〜・スリ〜」という風にカウントすることが多いです。

ステージなどの生演奏の場合は「1〜2〜1234」と「4」までカウントしますが、スタジオ録音の場合は「1〜2〜123…」と「3」で止めます。これは、「4」までやると、「4…」のエコーが残って、曲の頭に被ってしまうのを防ぐためです。テンポの速い曲の場合は「2」で止めることもあります。また、テンポの遅い曲の場合は、音の出だしの1小節前しかカウントしないこともあります。もちろん、これは4拍子の時の話です。 普通、歌モノにはイントロがありますが、CMなどのように、いきなり歌から始まる場合には、音が取りやすいように、カウントと一緒にコードをジャラン〜と弾くことが多いです。

今はクリックを使うことが多いので、クリックに合わせてカウントすればいいのですが、昔は何もないところで正確に曲のテンポを出すのは、意外と難しいものでした。特に、演奏時間をコンマ何秒まで求められるCMの場合は、指揮者やドラマーなど、カウントを出す人の責任はとても重大でした。
 
中には、曲のテンポがどうであれ、いつも同じテンポでしかカウントできない…という信じられないようなアレンジャーさんもいたんですよ。そういうアレンジャーさんの場合、カウントのテンポと曲のテンポが全然ちがっていて、何だかおかしかったです。で、こんなときは、そのアレンジャーさんが出すカウントと同じテンポで演奏したら絶対に時間が狂ってしまうので、プレイヤーの方でアレンジャーさんのカウントを無視して、適当なテンポで演奏する…なんていう、今では考えられないようなこともやってました。ベテランの作曲家さんでも、テンポ感のない人もいらっしゃったようです。

 

 

 楽隊って?



これはミュージシャンの一種、自虐的な言葉で、「どうせ俺たち楽隊は、しょせん川原乞食みたいなもんだしさぁ…」とか、グチをこぼしていたようです。自分たちのことは「楽隊」といっても、人に言われるとムカッとくる…というような種類の言葉だったのでしょう。今の若いガクタイたちは、あまり使わないようです。

我が師匠の「下手な芸術家になるな、優秀な楽隊になれっ」というお言葉は、なかなか含蓄があったと、今でも思ってます。

 

 

 楽譜の「直し」って?

一般のオーケストラで使っている楽譜は「出版」という形で市場に出回り、長年に渡って世界中で演奏され続けているようなものが多いのですが、スタジオで使う楽譜は、作曲、あるいは編曲して、初めて音を出すようなケースがほとんどです。写譜ミスの可能性もあるし、スコア自体が間違っていることもあります。

更に、間違いではなくても、いざ音を出してみたら「あれれ、こんなイメージではなかったんだけどなあ」なんてこともあるので、現場で修正するということも少なくないのです。この場合の「直し」とは、その両方のケースを含んでいます。

また、劇伴やCMの場合は、音楽的なイメージの違いとか以外に「時間合わせ」の直しが結構あります。その一因としては、実際の映像の尺(長さ)が、作曲→写譜→録音当日の段階を経てる間に変わってきてしまって、打合せの時と違っていた、とか、作曲家さんの計算ミスなどが挙げられますね。

トータルの時間がほんの少し違っていた…とかだったら、テンポを微妙に変えることで解決できるのですが、曲の途中の「絵合わせ(場面と音楽をピッタリ合わせること)」が違っていたりすると、ちょっと面倒なことになります。曲の途中で○小節…あるいは○拍かを追加したり削除することも可能なのですが、間違いなく曲の流れは壊れますので、なかなか難しいものがあります。

さらに詳しく知りたい方はこちら→押すアレンジャー

 

 

 貸し楽器って?


スタジオで使う楽器のほとんどはミュージシャン自身が所有している楽器を持ち込みます。また、ピアノやティンパニーなどの大きな楽器はスタジオに備え付けのものを使うことになっていますが、スタジオの備品で間に合わないときなどは専用の業者さんからレンタルすることとなります。

貸し楽器を使うのは主に大型の打楽器…和太鼓やドラなどでしょうか。以前はチェンバロや各種の電気楽器も貸し楽器を利用する場合が多かったのですが、最近はシンセで間に合わせてしまうことが多いようです。

 

 

 上手って?


「じょうず」でも「うわて」でもなくて、この場合は「かみて」です。これが紛らわしくて、いつも分からなくなってしまうのですが、ステージに向かって右側が「上手」になります。コンサートの場合、普通は下手から出てくることが多いのですが、編成によっては両側から出ることもあります。

 

 

 カメリハって?


テレビ番組の録画をする場合は、まず楽譜のチェック等をかねて、何度かリハーサルをします。その後で、今度は演奏というよりは、カメラワークをメインにしたリハーサルをします。どの奏者を、どんな角度で、どのカメラが撮るか…というようなことを、あらかじめ決められたシナリオに沿ってやるのです。でも、実際にやってみると思わしくない点も出てくるので、途中で「ダメ出し」をしながらリハーサルします。これが「カメラリハーサル」、いわゆる「カメリハ」です。もっと略して「カメリ」などともいいます。

 

 

 カラオケって?

今では世界中で通用する様になった「KARAOKE」は、もとはれっきとしたスタジオ用語でした。

昔は、歌謡曲などを録音する場合に、歌とオケは同時に録音するのが当たり前でした。…というか、それしかなかったのですが。その際、ちょっと歌の具合がイマイチだなと思われるような場合には、一応OKが出たあとに「最後にカラオケを1つお願いします」ということが時々ありました。

同録でやった分がNGだと、このカラオケを流しながら歌を入れなおしたのですが、当然、音質は劣化しますので、あくまでも最後の手段だったのでしょうね。

その当時は、まさかその「カラオケ」だけを発売して、それが商売になる…なんてことは、考えも及ばなかったのだと思います。

 

 

 仮歌って?

歌ものを録音する場合の手順としては、「オケを録ったあとでゆっくり歌を入れる」というのが、今は普通になっています。でも、オケを録る時に全体のイメージがつかめないと困るので、取りあえず一緒に歌って録音することもしばしばあります。これを「仮歌」といいます。この仮歌には、歌い手さん御本人が来ることもあれば、別の人が歌うこともあります。

御本人が来れない理由としては、スケジュールの調整がつかなかったとか、先に誰かに歌ってもらって、それを聴きながら覚えるといったことがあげられると思いますね。

仮歌は、その歌を作った作曲家の先生ご自身が歌われることもよくあるのですが、これがけっこう上手な方もいらっしゃって、吃驚することがあります。その他には、歌の得意な(?)ディレクターさんやマネージャーさんが歌う…なんてこともあります。あと、その仮歌専門みたいな方もいらっしゃるんですが、中にはどう考えても歌手ご本人より上手じゃないかと思われるケースもあったりして、おかしいです。

その仮歌の人は、その場で出された楽譜を初見で歌わなければいけないので、スタジオミュージシャンにちょっと似てますね。

 

 

 カルテットって?

特にスタジオ用語というわけではありません。四重奏の事ですが、単に「カルテット」というと、弦楽器四重奏のことを指すことが多いです。普通は第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという編成になります。スタジオでは略して「ゲンカル」等とよく言います。

ちなみに、○重奏、という言い方は…

 二重奏:デュエット
 三重奏:トリオ
 四重奏:カルテット
 五重奏:クインテット
 六重奏:セクステット
 七重奏:セプテット
 八重奏:オクテット
 九重奏:ノネット

という風に言います。1人は、勿論「ソロ」です。これ以上は「十重奏」とは言わないようです。また、 これは楽器だけではなくて、二重唱や三重唱などにも当てはまります。

 

 

 カンパケって?

いわゆる「業界用語」の中には略語らしきものが多く、日ごろは何気なく使っていても、元の意味や何の略なのかが定かでないものが、かなりあるように思います。この「カンパケ」もその1つで、どうやら「完全パッケージ」の略らしいですね。番組・楽曲・CM・映画…などにおいて、全ての製作過程が完了して、商品として出せる状態になったものを「カンパケ」と言っているようです。

 

 

 キーと音域って?

この場合のキーとは、「ハ長調」「C dur」「C major」とかいう、歌や曲の「調子」のことです。音域とは、楽器や歌手の演奏可能な音の範囲です。楽器の場合は大体は決まっていますが、歌い手さんの場合は当然ながら人によって違います。高すぎたり低すぎたりして歌い難いと、「キーが合わない」などと言います。

歌物のアレンジをする場合は、歌い手さんの音域をよく確認してから、キーを決める必要があるのですが、時にはそれが上手くいかないこともあって、現場に来てから「譜面を半音あげて弾いてくれ」というようなことになる場合もあります。

この「現場でキーが合わない」ということになって、急きょ半音(または一音)下げて(または上げて)やってくれ」などということになるのは、実はそれほど珍しくありません。で、その場合は、ミュージシャンはいきなり移調して演奏することになるわけですが、昔は「そんな事出来るかい! 楽譜書きなおしてこいっ!」なんていうミュージシャンもいたようですね。最近はそんなことはなく、皆その場で移調してやっています。

 

 

 キープって?

この場合のキープとは「スケジュールの仮押さえ」みたいなことを指します。色んなケースが考えられますが、いちばん多いのは「録音は○日に…」というスケジュールは決まっていても、作曲家さんやアレンジャーさんの楽譜ができあがってこないので、編成が分からない…といったケースでしょうか。

つまり、録音の日にちは決まっていて、それに向けて作曲家さんたちは何かしらの曲を書いてはいるのですが、それにフルートの出番があるのかどうか、あれば仕事があるわけだし、なければ行く必要がないというわけで、宙ぶらりんな状態ですね。

ほかのケースとしては、○日に録音があるのは確かだけれど、それが何時からかが決まらない…といったケースでしょうか。中には、たった1曲の録音のために、とりあえず数時間…ひどい場合は丸1日を押さえておいて、そこから色んな人の都合を聞きまくった上で、その中の「皆の都合のいい1時間」に決まる…というケースもあります。

このキープというやり方は、ミュージシャン側からはあまり評判が良くないようです。つまり、キープ状態だと、キャンセルになってもキャンセル料はないし、かと言って、押さえられている以上は、勝手に他のスケジュールが入れられませんからね。

 

 

 キューって?

この場合は、スタジオやステージ関係で、ディレクターや舞台監督などから演奏者や演技者に送られる「スタート」の合図だと思っても良いと思います。録音スタジオではあまり使いませんが、テレビやステージ関係では、このキューが進行上で大きな役割を果たしています。

 

 

 キューボックスって?

スタジオ録音の場合、普通のコンサートのように生の音で聴き合わせてのアンサンブルは出来ない場合が多いために、ヘッドフォンやイヤフォンは必須になります。

その場合、楽器によってボリュームは違うし、ミュージシャンそれぞれに聴きたいバランスも違いますので、1人1人、あるいはグループごとに、5〜8個くらいのフェーダーが並んだ機械をあてがわれます。それで好みの音量やバランスに調整するのですが、その箱状のものを「キューボックス」といいます。

右の写真がキューボックスで、黒や赤の上下にスライドさせるものが、フェーダーですね。


フェ−ダーの1つには、副調室で聴いているのと同じバランスのものが必ず入っています。普通はこれを聴いていればよいのですが、パートによっては、特にどれかの楽器を大きく聴きたい…あるいは逆に聴きたくない…ということもあるので、残りのフェ−ダーには、リズム隊・ブラス・・木管・ハープなど、個別の楽器が入ってます。
 
クリックを使う場合には、必ず別に専用のフェ−ダーがあります。

 

 

 京琴って?

スタジオ用語と言うわけではないのですが、スタジオでしか使われない…と言ってもいい楽器です。この楽器の素性がイマイチ定かでないのですが、琴奏者の山之内喜美子さんが、京都の古道具屋だかで発見されたもので、そんなところから「京琴」と名付けられたんだそうです。

サイズは普通の琴の半分くらいの大きさで、弦は琴と同じく13弦なのですが、かなり細い金属の弦が張られている点が普通の琴と大きく違う点です。この細い弦のおかげで、「押し手」という、ギターの「チョーキング」に当たる奏法が、とても効果的に使えるのです。誰かが試験的に作った楽器なのではないか…とも思うのですが、真相はどうでしょうか?

その「押し手(チョーキング)」や深いビブラートの醸し出す独特の雰囲気が特に演歌の世界で好まれて、今でも頻繁に使われています。演歌以外にも、わたしが参加しているチャゲ&飛鳥の「万里の河」にも入っていますし、昔の薄謝協会の名作ドラマ「花遍路」や、人形劇「三国志」などの劇伴にも、数多く使われています。

 

 

 金魚鉢って?

副調室の俗称です。副調室の項を参照してください。

 

 

 クチパクって?

テレビの番組やライブのステージで歌を歌う場合、歌い手さんがその場で本当に歌うのではなく、あらかじめ録音した音源(時にはCDを流すことも)に合わせて口をパクパクさせ、歌う格好だけしていることを「クチパク」と言ってます。いかにも「ちゃんと歌ってますよ〜!」と言わんばかりにワイヤレスマイクを持っていたり、体に小さいマイクを付けてやっていたりすることもあるから、なかなか面白いですよね。

このクチバクは、何も歌い手さんだけの話ではありません。オケやバンドでも、あらかじめ録音しておいたものを流して、それに合わせて演奏する真似をしていることがあります。この場合は「クチパク」ではなく「当てぶり」というんですけれどね。

要するに、番組収録の際に「映像に集中できるように…」ということでやるのだと思いますが、どうしても実際に音を出しているのと格好だけやっているのとでは差が出てしまいますから、よく見ていると分かることが多いです。

 

 

 クラシックパーカッションって?

パーカッションといえば「打楽器」のことなのですが、このクラシックパーカッションというのは、数ある打楽器の中でも、ドラムやラテンパーカッションや和楽…その他もろもろの民族楽器「以外」の楽器、つまり、ティンパニー・シロフォン・グロッケンシュピール・スネアドラム・グランカッサ(大太鼓)・シンバル・ドラなど、オーケストラで普通に使われている類の楽器のことを言います。

ただし、 この言い方は、クラシックの世界では使われることはなく、主にスタジオやステージ関係で言われているようで、略して「クラパカ」「クラパ」などとも言うようです。

 

 

 クリックって?

クリックというのは「カチカチ…」というような音のことですが、スタジオでクリックという場合は、録音の時にバックで流しているメトロノームみたいな音のことです。この音は、プレイヤーにはイヤフォンやヘッドフォンで聞こえるのですが、最終的には消去されます。

もちろん、音楽の種類によってはクリックが使えないこともありますし、テンポを機械的に固定してしまうことは決して好ましいことではないのですが、以下のような事情で、スタジオの録音ではこのクリックを使うことが多くなっています。

@何度やっても、同じ時間で演奏できる

A指揮者が見えなくても、あるいはいなくても、演奏が可能になる。

Bダビング差し替えをする時に便利。

クリックの弊害としては、

@機械的なテンポで、音楽が無味乾燥になる

A微妙なテンポの変化が出来ない

最近のクリックはコンピュータを使っていることが多いのでテンポの変化も可能になっていて、ちょっと聞いただけでは分からないのですが、やはり所詮は機械なので、限界はあるようです。

「クリック」は、別名「ドンカマ」とも言います。別項「ドンカマ」の欄も参照してください。
さらに詳しく知りたい方はこちら→ドンカマ登場

 

 

 クレジットって?

 劇伴などの様に、一度に何曲も録音する場合は、似た様な曲があったりすると、どれがどれだか、後で分からなく成ってしまう恐れがあります。
 なので、曲を録音する前に、M-ナンバーを入れる事が多く、これをクレジットと云ってます。 普通、指揮者、若しくはディレクターが「エム イチ」などと叫ぶ事になっています。
 取り直す場合は、「エムイチ テイクツー」などと云います。

 

 

 劇伴って?

ドラマ(劇)のバック(伴奏)の音楽ということで、「劇伴」と言います。今では映画やテレビ、もしくはラジオのドラマ番組のバックで流れる音楽を指すことが多いですが、劇場でやるお芝居などのバックの音楽ももちろん劇伴で、歴史的にはむしろこちらの方が古いわけです。我々は日常的に使っている言葉ですが、やはり業界用語でしょうね。

さらに詳しく知りたい方はこちら→劇伴

 

 

 劇伴横丁って?

「劇伴横丁」と言って分かる人は、もうかなり少なくなってしまいました。現在のNHK放送センターが出来る前は、NHKと言えば千代田区内幸町にあったのですが、その頃の話です。

その内幸町のNHKの3階(2階だったかも?)には何百人もお客さんを入れて公開番組の収録などもできる、かなり大きな「1スタ」と呼ばれるところがありました。その他の2スタ以下(何スタまであったかは覚えてない…)は1階にあったのですが、あまり広くもない廊下の両側にズラリとスタジオが並んでいて、諸々の劇伴の録音などはそこで録ってたことから、誰ということなく「劇伴横丁」と称するようになったらしいです。

 

 

 ゲネプロって?

スタジオの用語ではないのですが、レポートにステージ関係の話が出ることもありますので、取りあえず書いておきます。

ゲネプロとは、ドイツ語の「ゲネラル・プローベ(General Probe)」の略で、「総練習」とか「通し稽古」という意味です。昔は、学問の世界、特に医学用語なんかはドイツ語がメインで、大学生なんかも「シャン(Schoen)」だの「メッチェン(MaeMaedchen)」だのと、ドイツ語崩れのスラングを使って、粋がっていたりしたみたいですね。

戦後からでしょうか、お医者さんも英語を使うようになり、ドイツ語の影が薄くなってしまったような感じがします。でも、クラシック音楽界では、今でもドイツ語が主流のようですね。音大やオケ関係などでは「アウフタクト」「アインザッツ」と云うようなドイツ語が使われていますし、音名でも「Cis」「Ges」など、「ドイツ音名」が幅をきかせているようです。
 
そんなわけで、クラシックとは縁のないポップス界でも、「ゲネプロ」は使われているようです。

 

 

 弦って?

「弦」と云えば、もちろん弦楽器に張ってある弦のことですが、スタジオで「弦」という場合は弦楽器セクションのことを指します(別項「ストリングス」参照)。

 

 

 弦カルって?

弦のカルテット、つまり弦楽四重奏のことです。 →「弦」、「カルテット」(別項「ストリングス」参照)。

蛇足ですが、うちの編集長は「ゲンカル」と聞いて「玄米カルシウム」を思い浮かべたらしいのです。で、それをヴァイオリニストの小池弘之さんに話したところ、大変にウケてらしたそうですよ。

 

 

 弦ダビって?

弦セクションのダビングのことで、なぜかこうした言い方をするのは弦に関してだけなのです(強いて言うならば‘歌ダビ’という言い方があるにはあるのですが…)。おそらく、リズムやブラスを先に録って弦をダビングにする…というケースが多いからではないかと思うのですが、本当のところは分かりません。

 

 

 弦の編成を表す数字(64221とか…)って?



 

誰が云い出したのか分かりませんが、弦楽器の編成を表すのに、よく「ろく・よん・にぃ・にぃ・いち」などと言います。これは、ファーストヴァイオリン・セカンドヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスの人数を表してます。アニメの劇伴の場合は「86442」くらいが普通でしょうか。

この数字は普通のオケに比べるとかなり少ないのですが、スタジオのスペースや予算などの関係で、どうしてもこの程度になってしまうようですね。それこそ、別枠で話したエンジニアミキサー)さんの録音技術などで、これでもかなりの大編成みたいに聴こえます。ときどき、「4421」みたいに4桁の時もありますが、こういった場合はコントラバスが無いというわけです。

 

 

 コーディネーターって?

別項「インペク」と同じ意味で使われています…というよりも、コーディネーターのことをインペク屋さんと呼んでる…と言った方が正しいのかもしれません。レコーディングのためにミュージシャンを集めたり、スケジュールを調整したりする人のことを「インスペクター」と言うのは正しくないようですし、CDのブックレットに「インペク」と書くわけにもいかないでしょうしね。

 

 

 コーラスって?

一般的にコーラスといえば合唱のことで、数十人の合唱を指すことが多いですが、スタジオ関係でコーラスというと、3人程度の小人数のことが多いです。もちろん、普通の意味でのコーラス、つまりもっと大人数のこともあります。
 
演歌関係だと、ほとんどの場合が女声3人で、混声4部ということは滅多にありません。おかしいのは、たった1人でも「コーラス」ということがあるんです。要するに、メインのヴォーカル以外のヴォーカルは「コーラス」で片付けられるようですね。

 

 

 拘束時間って?

スタジオミュージシャンの仕事をオーダーする時は時間単位で行います。 たとえば「○月○日の13時〜15時」という風になるのですが、この場合、その仕事がどんなに早く終わったとしても、最初に頼まれていたその2時間分(これが拘束時間)のギャラが支払われます。

逆に、時間が押した(延びた)場合は、押した分が追加として支払われます。ただ、10分そこそこ押した場合は、「ごめん、こんど埋め合わせするからね〜」というようなことになることも、ままあります。まあ、その分、少しぐらい遅刻していっても、ギャラから差し引かれるということもあまりないので、お互いに「まあ、いいか♪」という感じでしょうか。

 

 

 5.1chって?

ちょっと説明が難しいのですが、最近の映画やDVDで使われているサラウンド方式の音響システムと言えばいいのでしょうか。その音楽や映像を鑑賞する人の前に3個、後ろに2個のスピーカーを置き、さらに低音専用のスピーカーを置くのですが、これだと「6チャンネル」になってしまいますよね。でも、この低音専用のスピーカーは「0.1ch」と数えるんだそうです。

このあたりの詳しいお話は、東京芸術大学助教授の亀川徹さんに教えていただいた「5.1ch講座」を参考にしてください。


 

 

 コントロールルームって?

スタジオ関係で「コントロールルーム」といえば、いわゆる「副調室」のことを指します。

 

 

「さ」行〜「な」行  「は」行〜「わ」行

 

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