火サスの音楽ができるまで

 

これは、作曲家・糸川玲子さんに教えていただいた、日本テレビ「火曜サスペンス劇場」の音楽ができるまでのお話です。私たち一般人ではなかなか知ることのできない、想像さえできない貴重なお話なので、ぜひ読んでみてくださいね。

 

まず、ドラマの中に、どこにどのような音楽を入れるのかを決めるのは、とても時間がかかる作業で、映像画面を仕上げるスタッフの皆さんと会議をして、よ〜く 話し合うんだそうです。この段階ではすでに「撮影」は終了しているので、俳優さんたちやヘアメイクさんなど、撮影現場でのスタッフさんたちとの作業は通常はないそうですが、画面をつないでみて「やっぱりここに台詞の追加がほしいなあ」なんて場合は、俳優さんにもう一度ご足労いただいて、声だけ録り直すこともあるようです。

そうして、何とか画面がつながった時点(この仮編集のことを‘オールラッシュ’というそうです)で、プロデューサーさんをはじめとする色んな関係者の方々と一緒に試写をするんだそうです。2時間ドラマはコマーシャルを除いて正味「1時間34分」と決まっているらしいのですが、この段階ではまだ少し長めに作られているそうです。このオールラッシュ時のVTRを観た段階で、放送上の問題が見つかったり、前後のつながりが良くなかったりすると、プロデューサーさんからダメ出しがあったりして、編集をやり直したりすることもしばしばあるんだそうですよ。

そのあとに「1時間34分」に合わせた本編集作業があって、ここで初めて「この場面の音楽は○分○秒で、ここは○秒…」というような音楽のタイム(尺)が決定になるんだそうです。普通に考えると、ここから糸川さんたち作曲家さんのお仕事がスタートするように思うのですが、何せ、皆さんギリギリで作業してらっしゃるので、この本編集ができあがるのが、音楽録音日の3日前なんてこともあるんですって。これを受けて作曲を始めたのでは、絶対に録音に間に合いませんよね?だから、オールラッシュのVTRを見ながら少しずつ作曲の作業を進めていって、本編集ができた時点で微調整して音楽の尺を合わせるんだそうです。でも、ときどき「微調整」では終わらないこともあるようで、なかなか大変みたいです。

最後の仕上げの作業もたくさんの方が関わりますが、音楽の打ち合わせには、監督さん、選曲屋さん、音響効果さん(パトカー・電話のベル・風・雨などの音を入れる人)、記録さん(撮影のときから‘どの場面が何秒’と把握している人)、音楽プロデューサーさん(録音現場を仕切る人)、作曲家さんは、毎回かならず集まるんだそうです。で、皆で意見を出しあって話し合うわけですが、監督さんによっては、画面を何度も繰り返し見ながら話し合う…ということもあるそうです。

さて、その話し合いですが…監督さんの「この場面にこんな感じの音楽がほしい」というような希望を優先させながら、「でも、そこに入れてしまうと、次のこの場面の音楽が生きてこないのでは?」とか「ここは音楽は我慢して、音響効果さんに雨や雷の音を強くしていただいて、ここまで音楽を待ちませんか?」などの意見を、選曲屋さんや音楽プロデューサーさんが出していくそうです。もちろん、糸川さんもちゃんとご自分の意見を言うそうですよ。ただ、糸川さんから出すのは「(画面の都合上、音楽がスタートさせにくい場合もあるので)次のカットからでいいですか?」とか「この台詞が終わってからの方が入りやすいです」というような、実際に作曲する場合を考えての意見なんだそうです。これぞまさしく「現場の声」ですよね。こうした話し合いは、長いときには半日以上もかかるそうです。

こうしてできあがった本編集(このVTRには‘完尺’とか‘編集済み’とか書かれてるようです)のあとでも、ビデオの通しのタイムコード(これを‘キャラ’といいます。編集画面に出るタイムの数字ですね。キャラはキャラクタ=文字の略だそうです)が変わることがあるので、選曲屋さんとは常に連絡を取り合って、細かい確認をしていかなければならないそうです。それでもなお、「ここは音楽いらなかったから、悪いけど使うのをやめよう」なんてこともあるんですって。ちなみに、こういったことを決めるのは選曲屋さんなんだそうです。もちろん、決定の前には監督さんとも話し合うんでしょうけれどね。…で、これで、やっと完成!ということになるそうです。

 

…いかがでしたか?
いつぞやテレビで「なぜ‘火曜サスペンス劇場’なる番組を作ろうと思ったか(火曜日の夜だけでも、ゆったりとお茶の間でテレビに向かえる時間を持ってもらおう…って感じだったかな?(^^ゞ)」や「EDテーマと劇伴との絶妙な関係(本編ではインストゥルメンタルとして色んなバリエーションで何度も使い、最後に歌詞つきで流れることで更に視聴者に曲を印象づける。そのためにも癒されるような曲でなければならない…というお話だったと思います)」などを番組発足当時のプロデューサーさんが語ってらっしゃいましたが、それらのお話と糸川さんから聞く皆さんの1本1本にかける思いやご苦労を知ると、毎週ちゃんと欠かさず見なくては…という気持ちになってきますよね。

これからも、チャンスのある限り、レポートさせていただこうと思ってますので、お楽しみに〜♪

 

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