川崎真弘さんの七回忌によせて…

 

2012年5月4日。作曲家・川崎真弘さんの七回忌が、千葉県にある川崎さんのご自宅で行われました。

川崎さんと言えば、役所広司さん主演の社会派ドラマ映画「金融腐食列島 呪縛」からドキュメンタリー番組「グレートジャーニー」に朝の連続テレビ小説「まんてん」、さらにはアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」「ひみつのアッコちゃん」など幅広いジャンルの劇伴音楽を手がけられ、その劇伴作家さんとして活躍される前にはキーボード奏者として「イエロー」「カルメン・マキ&OZ」「竜童組」などの一員として活躍されてた方です。

うちのHPとしても、過去に「慶次郎縁側日記」の録音レポ(1期2期)や映画「燃ゆるとき」の録音レポ、遺作となった「河井継之助」の録音レポで取り上げさせていただきました。また、川崎さんのお仕事現場にお邪魔させていただいたり(レポ)、川崎さんの他にエンジニアの亀川 徹さんにもご協力いただいて「5.1ch講座」なるものも作らせていただいたことがあります。

こうして録音レポを通じてお知り合いになれたものの、実際にお会いできたのは1回のみ。その後、2006年5月にお別れすることにるまで2年半くらいと短い間のお付き合いでしたが、とても濃い時間を過ごさせていただきました。音楽のことも、作曲から音色や録音にいたるまで、色んなことを教えていただきました。このHPのこともとても気に入って応援してくださり、何度も背中を押していただきました。

そんな川崎さんに、やっと再会する機会が訪れたんです。一周忌のレポに書いたように、2度目のご対面が果たせるかな…と思ってた矢先に旅立たれてしまわれたので、これからはもうご命日のころに私に色々とかけてくださった言葉を思い出して偲んだり、テレビから聴こえてくる川崎さんの音楽であの笑顔を思い出すしかないなあと思ってたんです。でも、あるとき突然HPのメールフォームを通じて奥様の陽子さんからご連絡いただき、この七回忌に行かせていただけるようになったことをほんとに嬉しく思います(*^^*)


こちらは川崎さんのご自宅の玄関ホールに飾られてた打ち掛け。あまりに見事でしばらく見とれたあと「娘さんのお嫁入りのときの衣装ですか?」とお聞きしたら、そうではないとのこと…。

ご夫婦でどこかにお出かけになったとき…だったかな、とにかく何かの折りに「お家に着物っていいね!」なんてお話をしてたら、さっそくお知り合いの方が贈ってくださったとか…このあたりからも川崎さんの、そして陽子さんのお人柄やお付き合いの広さが伺えますよね♪


そうそう、七回忌の法要は5月4日ですが、前日から川崎さんの手がけられた様々な作品をご自宅のスタジオで流して偲ぼうという企画があるらしく、私も5月3日からお邪魔しました。

↓こちらがそのスタジオ。
広さは何畳くらいって言えばいいんだろう…スクリーンに向かって30名くらいで映像を楽しむことができるって感じでしょうか。オンマウスで、別カットに切り替わりますよ♪

 

 

いまはこうしてスクリーンのみになっていますが、建設された当時は調整卓なんかがあって録音できるようになってたそうです。うちの「5.1ch講座」でも熱心に語ってくださってたように、川崎さんはご自身の感じる「いい音」を後進にも感じさせて、生楽器の素晴らしさや音にこだわることの大事さを受け継いでほしいと強く願ってる方でした。だからきっと、ここでご自身の思う「いい音」を作って、そして色んな人を呼んで聴かせてあげたりしたかったんじゃないでしょうか…。

川崎さんとよくメールを交わしてたころ、このご自宅のスタジオにかける夢なんかも語ってくださってました。そして「スタジオができたらおいでよ。ゲストルームも作ってるから、是非そこに泊まって!」なんて言ってくださってたんですよ。そのスタジオにこうして立ち、ゲストルームに案内していただいたときは、色々と込み上げてくるものがありました。

あ、このスタジオの建築中にご病気が発覚したので一度もお仕事として使われることはなかったそうですが、病床の中でも体調のいい日はここで音を鳴らしてみたりしてたそうです。それに、うちのHPもときどき覗いてくださってたとか…そのときの川崎さんのお気持ちを思うといまだに胸が詰まるんですが、やっぱり来れて良かった。そして、ほんといい音のするスタジオです(*^^*)


こちらはスタジオの2階にあった資料室の本棚。
川崎さんが手がけられた作品のサントラや台本を中心に、陽子さんのお仕事関係のものなど貴重なものがいっぱい並んでました。

あ、真ん中の段のちょっと左寄りにあるのはグレートジャーニーのサントラだなあ…って、小さすぎて見えませんよね。すみませんm(__)m

オンマウスで画像が切り替わります♪


こうしてこのスタジオでは夜通しで川崎さん関連の作品が上映され、北海道や九州から集まってきた川崎さん縁の方々がどっぷりと川崎さんの音楽の心地よさに浸ってました。ちなみに、私は午前3時半ごろに母屋の方に移動。娘さんとそのお友達、そして映画「折り梅」の録音でエンジニアをされてた田村能成さんとしばらく歓談しました。

…っと、その田村さんなんですが、実は私がツイッターにこの上映会のことをツイートしてたら、それを見てDMをくださったんです。そして、そのまま急きょ初電話をすることとなり「じゃあ、ここに来てくださいよ〜!」なんて感じでお呼びしました。何でも、川崎さんのお宅とはかなり古いお付き合いなんだとか…。で、私は私で田村さんとはもう何年も前から「会いたいなあ」なんて言ってたんですが、どうにもタイミングが合わないままだったんです。でも、こうして川崎さんのおかげでまた1つ新たなご対面を果たすことができましたよ(^O^)

結局、お布団に入ったのは朝5時半ごろだったでしょうか…私1人で使うのはもったいないような素敵なゲストルームで、朝8時ごろまでぐっすり休ませていただきました。

 

 

こちらは法要当日のお仏壇まわりの様子。

実はまだ納骨されてないので、川崎さんはあの掛け軸の下にいらっしゃいました。だから、お仏壇に向かって手を合わせる格好をしつつ、顔はちょっと右に傾けてご挨拶。お骨をじっと見つめると何だか胸がいっぱいになって、心の中で「やっと会えましたね。お久しぶりです!」って叫んでました。

オンマウスで宇崎竜童さんから贈られて来たお花がアップになります♪


この日、ほんとは午前11時ごろから法要を始められる予定だったのかな…でも、川崎さん宅に向かう途中の駅で人身事故があったとかで、総武線がストップ。ご住職も含めてこの日に来られるお客様の多くが同じ電車に乗ってるようなのに復旧の見通しが立たず…みたいな感じで、川崎さん宅では娘さんのご主人が iPad で情報を検索したり、その車内から陽子さんのところに電話やメールが来たりして、ちょっと慌ただしくなりました。

でも、私は何の役にも立たず、ただボーッとしてるだけ…。そんなときに今度は震度4の地震もあって、地震には慣れてない私はちょっとドキドキしました。でも、関東の皆さんはもう慣れてるんでしょうね。口々に「あら、大きいね」なんて言いつつも、そんなに慌てる様子もなかったです。いやしかし、こんなのがしょっちゅうなんて嫌だなあ(>_<)

こうして少しトラブルに見舞われたものの、長く酷く降り続いた雨も上がって、皆さんが集まってきました。
スタジオの方で上映してた「金融腐食列島 呪縛」「バウンス ko GALS」「KAMIKAZE TAXI」のメガホンを取られた原田眞人監督ご夫妻に俳優の矢島健一さん。NHK大河ドラマのプロデューサーさんにレコーディングエンジニアさんに公益財団法人ユニジャパンや湯布院映画祭の方などなど…ここでも川崎さんのお人柄やお付き合いの広さをひしひしと感じました。そして、亡くなって6年経ってもなお、こんなにもたくさんの素敵な方々が集ってくるなんて…ほんと、川崎さんって素敵な方ですよね(*^^*)

そうしてお寺さんがお焼香の仕方を教えてくださったあと、七回忌のお経が始まりました。先に娘さんから「すごくいい声でお経を読むんだよ」って聞いてたとおり、ほんと遠くまで通る素敵な声での読経で聞き入ってしまいました。


そして宴です。

ミュージシャンの小室 等さんが音頭を取り「彼は誰よりも美味そうに酒を飲み、飯を食うヤツでした。だから今日は我々も彼と同じように美味しいお料理と酒をいただいて、目いっぱい楽しみましょう!」の掛け声のあと献杯!(オンマウスで小室さんの別カットになります♪)

まるで川崎さんがそこにいて、あの満面の笑顔で「ほら、飲め飲め〜!」なんて言ってる錯覚を起こすような、あたたかで賑やかな食事が始まりました。


私はお隣にいらした公益財団法人ユニジャパンの徳武英章さんと、アニメの劇伴や作家さんのお話で大いに盛り上がりました。何かもうテンションが上がりすぎて記憶が飛んでるんですが、とにかく「あんなにいい音楽がたくさんあるんだから、もっと劇伴が注目されてもいいよね」「もっと作家さんにスポットを当てたような何かができないかな?」なんて話をしたような…せっかく川崎さんがつないでくれたご縁です。大事にあたためて、いつかほんとに一緒に何かできたらいいなあo(^-^)o


こちらはお食事。綺麗でしょ?美味しそうでしょ〜?(^O^)

ビールをいただきながらいい気分で、近くの方々とも川崎さんとの出会いとか交流についてお話しました。

そういや、右の斜め前+ちょっと向こうに原田監督がいらしたんですが、貫禄がありすぎてお話できずじまいだったなあ(^^ゞ


お食事が始まって30分くらい経ったころでしょうか…再び小室さんが立ち上がられて「陽子さんが川崎さん(ラッキーさんって言ったかな?)に手紙を書いてきたので、読んでもらおうと思います」と知らせてくださり、皆さんの拍手の中で陽子さんの朗読が始まりました。

これがもう…私なんて陽子さんが立ち上がってお仏壇に向かい、川崎さんへのお手紙を広げた時点ですでに涙腺が崩壊しちゃって大変なことになってました。詳しい内容については私なんかではとても書ききれないので置きますが、川崎さんが病気になられてから過ごしたお2人の大切な時間のことだったり、亡くなられてから新たに知ることになった川崎さんから陽子さんへの愛が分かるもののお話だったり、ほんとにほんとに素敵なご夫妻の固い絆を感じさせられる素敵なお手紙でした。

ああ、やっぱりお2人が一緒のところにお会いしたかったなあ。前に川崎さんのお仕事場にお邪魔したときは、陽子さんは別のお仕事の打ち合わせでお留守だったんです。だから今度は…と思ってたのに。ほんとはこんな素敵なお2人に迎えられて、このお家に来たかったよ…川崎さん、逝くのが早すぎます(>_<)


こちらがその陽子さん。
過去の録音レポにも何度か写真で登場していただいたことがあるんですが、そのころに比べると少し痩せられたかな…でも、やっぱり川崎さんと同じく笑顔が素敵で優しくて、思わず「千葉のおかあさん」って呼びたくなるような方でした。

それから、帰り際にもう一度お仏壇と川崎さんにご挨拶をしてたら、あるご婦人に話しかけられて、私が作った川崎さんの一周忌レポの話になりました。そのご婦人はとても目の綺麗な優しい笑顔の方で…というか川崎さんにソックリで内心ですごく驚きつつお話してたら、何と川崎さんのお姉様だったそうです。

ご本人には何も言えませんでしたが、本気で「ああ、いまようやく川崎さんに会えた」なんて思ったくらいです。もっともっとお話したかったなあ…。


そんなこんなで心から名残り惜しく思いつつ、そして再会を固く約束しつつ、午後3時すぎには川崎さんのお宅を出ました。駅に向かうタクシーには先ほどの徳武さんのほかに小室さんご夫妻が…。そして私の隣に乗られた小室さんと「何で帰るの?」「飛行機で」「成田から?」「え…あ…あれ?羽田のような…あれ?」「ええっ!?どっちだろうねえ」「とにかく駅前からリムジンバスに乗るんです」「リムジン?じゃあ安心だ!」なんてアホ丸出しな会話をしつつ、駅に到着。そこでタクシーの運転手さんに「羽田に着くと思いますよ」なんて言われちゃいました(^^ゞ

で、徳武さんも私もお財布を出して構えてたら、小室さんが「まあまあ、ここは年寄りに任せなさい(笑)」なんて言ってくださって、運賃をお世話になることに…写真や動画で見てるまんまの、優しい優しいオジさまでした(*^^*)

こんな素晴らしいひと時を過ごさせてくださった陽子さんとご家族の皆さまに心からの感謝を、そして川崎さんがつないでくださった新しいご縁の数々にもやはり心から感謝しつつ、七回忌のレポを終わりたいと思います。

 

2012年6月1日  

 

 

 

 

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