田中公平さん・作家生活30周年記念コンサートDVDのTDのお話

 

去る2009年11月1日に行なわれた「田中公平さん・作家生活30周年記念コンサート」のときにエンジニアの中村さんのご好意で中継車見学をさせていただいた私ですが、そのときのレポがとても好評だったんです。まあ、いただく感想の多くは「ちょっと難しかったけど…」から始まるんですが、どなたも「面白かった♪」とか「こんな作業をやってるとは…」「ますますDVDが手元に届くのが楽しみになった!」と、エンジニアさんの新たな魅力に気づいていただけて、ほんとに嬉しかったです…というか、私自身も色んな新しい発見があった印象に残るレポでした(*^^*)

これも、できるだけ私たちに分かるように易しく、でもご自身のお仕事のことをきちんと語ってくださった中村さんのおかげですね(^o^)

で、あのときのレポは「これから年内にこつこつとTDしてまいります」で終わってたんですが、やっぱりその後が気になるってものです。だって、あんなに大変な作業のもとで録音されたものが、その後どうやってDVDの音源(そんな言い方で合ってる?)になっていくのか、知りたいですよね〜?

そこで、中村さんに「あのあとのことを教えて〜!」とお願いすると、またまた深くて貴重な原稿が届きました。今回も難しい部分は多いんですが、これぞエンジニアさんのお仕事というのが感じていただけると思います。是非じっくりと腰を据えて読んでみてくださいね(^o^)b

また、以下のレポ中には中村さんが撮って送ってくださった作業中の貴重な写真が5枚ほどあります。どれも写真をクリックしていただくと、別窓で倍のサイズで見えるようにしてありますので、どうぞ細かいところまで観察してみてください♪

では、どうぞ〜!(^o^)丿

 

さて、こつこつとトラックダウンしまーす、のつづきです。

自宅でのトラックダウンですが、プロツールズのデータをまず受け取らなくては何もはじまりません。前のレポにもあるとおり、リハも含めると400Gという膨大なデータなので、さすがにこれはイマジンのサーバーに載りません(笑) SCIの当日データをイマジンのハードディスク(以下HDD)にコピーしてそれを宅配便で送ってもらうことになってました。

別の自宅トラックダウン仕事の予定が入っていたので、それより前に、と思っていたのですが、届いたのが11月10日。コピーの時間がとれないらしいのですね。収録のHDDはカセット式で、その本体ケースがまた別の収録で出かけちゃうと使えないわけで、SCIさんのような中継屋さんは夜中は移動時間だし、そのタイミングがなかなかなかったというわけです。

実際届いたHDDを半分ぐらい(なぜ半分なのかは後ほど)コピーするのにもFirewire800で40分以上かかりました。400GのコピーというとFirewire800で理論上66分の時間ですから、その倍ぐらいはかかったということです。

とりあえずサウンドのOKを公平さんにもらうのに、「虹色」だけ先行で落とし(トラックダウン)ました。

 

こんな感じの環境でTDしてます。


右の画面に映像のSEGAさんからもらったQuick Timeを映してます。(これはちょうど公平さんがピアノに向かっているところをステージ側が撮っている場面)

左の画面は全体のトラック画面。もちろん映っているのはごく一場面のごく一部のトラックです。

1曲であっても、これが全体のコンサートの音の基本になるので、20時間ぐらいはかかりました。まぁ10分を超える演奏なので、6回通して聞いたら1時間!ですからね〜、大曲の落しは大変ですよ。まぁそれも無事OKが来て、最初のサクラ・メドレーにとりかかったところで、別のアルバムの進行に入っちゃったので、次にはじめたのは12月8日!という1ヶ月のブランク。

これだけ間があくと怖いのは、前やったミックスやサウンドに反省が出てやり直したくなることです。エンジニアのさがでしょうか。

とりかかりがのびちゃったおかげで締切が12月13日、5日間で1時間半のライブTDは、歌手が一人とかバンドものならばまぁ余裕ですが、これは今回のコンサートには通用しません。とにかくボーカリストが多い!トラック数が多い!TDの準備だけで大変です。

まず、トラック数が膨大約96トラック。
これは再生するのに1台のHDDではまかなえません。安定的な動作を確保するために複数台に分散させるわけです。それが半分のコピーの理由です。Audio Filesフォルダーの中から、abc順に並んだオーディオをおおよそ半分の数、別のHDDに移動して作業をしております。

これで、OSとプロツールズソフトのHDD, プロツールズのセッションと半分のオーディオのHDD, 移動したもう半分のオーディオのHDD,トラックダウンの録音用HDDという4台態勢です。

ライブの収録なので、トラックには音声がなくても全て音データはべたに記録されているので、楽器や良く使われているトラックなどを気にせずざっくりとわけました。まぁこれでもまだ若干HDDの読み取りの負担は大きいので、ボーカルのトラックなどは唄っていない箇所でリージョン(音情報を記録している場所を可視化したもの)を切り分けます。これをすることで、そのリージョンのない場所では音データをHDDに読みに行かないのでHDDの負担は減ります。

これ、もちろん1トラックづつ音声を聞きながらやりますので、メイン・ボーカルだけでも8本以上あるのでなかなか地味で大変な作業です。VOJAのコーラスや弦などは全員をまとめてリージョンを切り分けています。

 

その感じが↓の画像です。

 

その中で弦関係を拡大して見ているのが↓です

↑の画像で横軸に上下対称に膨らんだり縮んだりしてるのが録音された音量を表すグラフで、その上に重なって、糸に結び目があるような線が重なっていますが、それがフェーダーの動きでさらにボリュームの調整をしているグラフです。音があってもその線が一番下に来ているとバランス上音が鳴ってないことになります。弦であっても細かい上げ下げや不要なところを下げていることがわかるでしょ?

 

もっと細かい上げ下げをしているのが↓の画像です。

これはどなたかのボーカルの曲のどこか、ですね。
歌詞の聞き取りにくいところを上げたり、マイクの吹きを抑えたり、ニュアンスを強調したりということをフェーダーでやっているさまです。

 

もうひとつだけ、TDのネタばらし(笑)
↓の画像は見る人が見たらこれだけで誰のどこか、がわかっちゃうのですが(汗)、これはボーカルのピッチを直してる図です。


ライブなので、もちろん演奏に介入しないのが基本ですが、プレイヤー自身が一発勝負の中で、聴衆も一回きりのコンサート現場ではよいですが、それが記録されて何回も視聴できるものに収められる時は、やっぱりミスを修正したいとか、もう少し良くしたいという気持ちは働きます。

実際ライブじゃないレコーディングでもよく「魔法をお願いします」と頼まれますので(笑)、今の技術でできる限りの努力はしているわけです。まぁライブなので他の楽器や会場に回り込んでいてどうしようもないものは素直にあきらめてそのままですがネ。

そんな感じで、サクラ大戦部門だけのDVDですが、TDだけで80時間近くもかけて一生懸命作ってます。レポ読んだ方はそんなことにも気をとめて聴いていただけたらうれしいですね。

 

どうでしたか〜?
いままで「何かとっても難しいことをやってるんだろうなあ」って思ってたエンジニアさんのお仕事が、これでグッと見えてきましたよね。まあ、やっぱり難しいってことに変わりはないんですが、随分とエンジニアさんという方が身近になった気がします。あんな作業中の機械の写真をいっぱい見せてくださったのも良かったですよね。あ、その写真がちょっとセピア調なのは、中村さん曰く「写真がセピア調になっているのは単にiPhoneで撮った時に間違ったからですぅ〜」だそうですよ。これはまあ、ご愛嬌ですね(*^^*)

そうそう、公平さんはご自身のブログのこちらの記事でこのDVDの見本を鑑賞されたときのことをつづられてるんですが、真ん中あたりに「録音自体の音もかなり美しい仕上がりになっています」なんて書かれてるんです。今回の中村さんのレポを読むと、こうした一言にほんとに胸が熱くなりますよね♪

このDVDは2010年2月25日に発売になります。SEGA STOREの「こちら」から予約できるようになってますよ〜。完全受注販売だそうなので、発売後の入手は難しくなる可能性もあるようです。皆さん、どうぞお買い逃しのないように(^_-)-☆

 

 

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