中村充時さんによるスタジオの録音機材のお話

 

 

以下のお話は、映画クレヨンしんちゃん「超時空! 嵐を呼ぶオラの花嫁」の録音レポと連動しています。是非、録音レポの方も合わせてご覧ください(^o^)

 

 

録りの機材関係の話です。
まず、スタジオの機材に関しては、今回の録音スタジオであるビクターのサイトの301スタのところを参照してくださいね。

SSL(エス・エス・エル)っていま普通に検索すると「インターネットの暗号化プロトコル」な〜んてのが上位にでちゃいますけど、そんなものがなかったころからあるコンソール(音声調整卓)メーカーで、Solid State Logic(ソリッド・ステート・ロジック)というのがフルネームです。Neve(ニーブ)とならぶイギリスの2大コンソール・メーカーです。まぁほかにもappoにあるAPI(エー・ピー・アイ)、やMCI(エム・シー・アイ)というメーカーもありますが、あ、どちらもアメリカだ、日本での普及度ではSSLとNeveがダントツですね。(他にもFocusriteとかメーカーありますけど…略。あ、公平さんの1stでオンド・マルトノ録ったスタジオはFocusriteの卓だった)

ところでSSLの歴史ってほぼ自分のミキサー歴と重なるんです。
ワーナー・パイオニアにQuad Eightに替わってSSL日本第2号機が入ったのが入社した年。その時がSL 4000E。そこから4000G、1994年頃にはSL 9000Gになっていたはずだから、アナログコンソールとしてはそれからあまり進歩してないというか完成したというか…

EシリーズとGシリーズでの大きな違いはEQの特性とパラメトリックの配置が大きく違って、マイク・プリはGが好きだけどEQはEだね〜とかエンジニアの好みは分かれるところですが、わたしにとっては今は卓を使うのは録りだけなので、Gの方がゲインの範囲やHighend, LowendのBell, Shelvingが選べたり、Mid, LowのFrequencyで×3,÷3が選べるのが大好き!です。

あ、そうそう、2大コンソールが日本を席巻していた頃、Neveは録りの卓、SSLはMixの卓と言われてましたねー。あ、自分だけかもしんないけど(汗)

コンピュミックス(フェーダーの動きの記憶がメイン)のプログラムがSSLの方が優れていたのと、設計の段階からワン・マン・コントロールを考えられて制作された卓、というのがおっきいかも知れません。

Wikiにある情報を書いても仕方がないので、SSLが入って画期的ななったできごとをいくつか。
外部の貸しスタジオではマルチ・テープレコーダーのリモートでパンチ・イン・アウトをアシスタントがすることが普通だったのですが、SSLは卓上にRec ready, Input thru, Tape return, monitorのボタンがあるので、エンジニアが直接録音のオペレーションができる、ということがひとつでしたね。

本格的なコンピュミックス、初期はフェーダーはVCA(ブイ・シー・エー:Volume controlled attenuatorの略)フェーダーでフェーダーは物理的には動かないものでしたが、それでも緑と黄色と赤のたった3つのLEDだけでみごとにフェーダーの動きを視覚化してコントロールできるという画期的なものでした。それ以前ではバンドのメンバーが横一列に卓前に並んで、きみはサビのここでこれここまで(ドラフティングテープにボールペンなどでマークした位置)上げてね、きみはこれ押して、とか手分けして、失敗したら何回もやり直したり、録ったテープをハサミで切ってつないで、という編集をしていたのです。

うわー、こんなの書いてたらめちゃ長くなりそう・・・というわけで今回はここまで!

 

 

…いかがだったでしょうか?
随分と深く専門的で難しい部分も多かったとは思うんですが、スタジオの録音機材の歴史から機材の特徴、エンジニアさんそれぞれのこだわりや、エンジニアさん同士の会話の様子など色んな角度から「レコーディングエンジニアさん」というお仕事が垣間見えたのではないでしょうか?

今後は、こうしたエンジニアさんのお仕事にも思いを馳せながらレポを読んでくださると嬉しいです(*^^*)

 

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