松田真人さんが語る「神のみ」劇伴の録音時のエピソード

 

2010年10月から放送の「神のみぞ知るセカイ」の録音レポの中に「書き譜」という言葉が出てきましたよね。で、その「書き譜」についてほんの少しだけ私なりの解釈を書いてたんですが、実際に演奏された松田真人さんからコメントをいただくことができました。現場でもらった「書き譜」に対して演奏者はどういったことをするのか、演奏者である松田さんから松尾さんの音楽はどう感じるのか…など貴重なお話がいっぱいなので、ぜひ読んでみてくださいね(^.^)b

 

 

「松尾早人」さんの書きのお仕事は、これまでにも何度かやらせて頂きました。それで何度かやらせて頂いた、僕の松尾さんの書きの印象は「精緻な感じが する!」と言う事です。勿論他の作編曲家の方でも、僕の方で精緻な印象を持った方はいらっしゃいますが、とにかく僕にとって松尾さんの印象は、精緻な書きをされる方と言う感じなのです。

今年の8月22日(日)に「松尾早人」さんの書きによる劇伴の録音のお仕事 (「神のみぞ知るセカイ」)があり、乃木坂ソニーのスタジオに出かけて行った訳ですが、 特に劇伴の録音の場合は、短時間で沢山の曲を演奏して録音する事になるので、 1曲にそうそう長い時間を掛けてばかりはいられません。そうするといかに早く譜読みをするかと言う事にもなって来る訳ですが、僕の場合は、 書き譜の譜面に、コードネームを自分なりに割り出して書き込んだりしています。こうすると、一音一音お玉じゃくしを読む作業に長い時間をさかなくて済むのです。勿論それでも一通りの譜読みは、欠かす事は出来ませんが。

この日の「松尾早人」さんの書き譜の譜面にも、同様にコードネームを割り出して書き込む作業をしました。それから通常スタジオの録音は、その日にスタジオに入って譜面を貰い、演奏をして録音に臨むので、特に劇伴のように沢山の楽曲がある場合は、一曲一曲を憶えて(ある程度暗譜して)弾くと言う事は到底出来 ません。と言う事は、当たり前ですが、譜面を見て弾いている事になる訳で、本 番の録音に際しては、実際に譜面を見ながら、即座に直感的に理解して弾くと言う事が大事になって来ます。僕はコードネームを書き込む以外にも、拍数を数え間違いないように、時には1、2、3、4(拍)と言ったように、拍数を書き込んだりもします。そして時には更に分かりやすいように1拍毎に、小節の中に、鉛筆で二本三本と縦線を書き込んだりもします。他にも、加線を必要とするような高い音域の音符が記されているような場合には、その音符をアルファベットで表記したりして、瞬時に理解して演奏出来るようにします。とにかく譜面を見て、自分なりにすぐに弾けるようにする為には、出来るだけの事はしているつもりです。そしてこれらの作業を、予定されている録音開始時間よりも少し早めにスタジオ入りをして、譜読みをしながら書き込んで録音に臨む訳です。

先日の「松尾早人」さんの劇伴「神のみぞ知るセカイ」の時にも、同様の事をして録音に臨みました。スタジオ入りをしてインペクの太田さんに「今日の松尾さんの書きはどんな感じですか?難しくないですか?」と言った具合で譜面の難易 度を確認してみると、太田さんからは「大丈夫、難しくないよ」と言った返事が 返って来ましたが、実際に譜読みを始めてみると、僕自身としては「これは、決して簡単ではないなあ、難しい箇所もありそうかも?」と言った印象でした。そして早速譜面に色々と書き込む作業をしていると、まだその作業が終わらない内に「松田さん、そろそろお願いします!」と声が掛かり、ピアノのブースに入り、早速録音が始まったのです。特にピアノが参加をしてから最初の方で曲で、 割と速めのテンポで、変則的なフレーズがあったり、(確か)拍子も何度か変わったでしょうか。そしてストリングスの皆さんも一緒なので、これはちょっと プレッシャーが掛かる録音だなあと、そう感じながらの録音になりましたが、や はりと言うべきか、ベーシックでオーケーテイクが録れた後に、僕のピアノで2箇所程度でしたか、部分的に直しをさせて貰いました。

録音の後半では、ピアノとソロヴァイオリンのデュオやピアノソロの楽曲になり、この辺では、特に松尾さんの、精緻で美しい書きの醍醐味を味合わせて頂きました。例えば、音の選び方一つを取っても、この一音が他の一音だと、随分と違ったサウンドになるだろうなあ、或いは微妙に違うだろうなあ(当たり前と言えば、当たり前ですが)と言う事。つまり松尾さんが選ばれたこの一音が、実にセンスの良い美しいサウンドに関与していると言う事なのです。僕は、ピアノを、美しく、そして豊かに鳴り響かせるような音の選び方が大好きで、松尾さん の書きにもその片鱗を感じてしまい、それこそ心が震えてしまうのです。この日 の最後の方のピアノソロの楽曲の録音では、それこそクラシック音楽の小品のような、美しくて高貴な音の調べを感じたりもしました。

それからこれは、直接音楽とは関係がないのかも?知れませんが、松尾さんのス タジオの現場での雰囲気ですが、松尾さんは、実に淡々と作業を進められると言う印象があります。ちょっと大袈裟ですが「あっけない程」淡々としていると言っても良いかも知れません。ですからこの日、ピアノの録音が無事に終わって、僕の方で「松尾さん!今日の書きも美しかったですねえ!」とお伝えをする間もなく、僕はスタジオを後にしてしまったのです(笑)。あの時、松尾さんは、担当の方とお仕事のお話をされているような状況でもありましたのでね。

 

2010年10月1日 
        松 田 真 人

 

 

…いかがでしたか?
松田さんの当日の日記の中では「必要事項を譜面に書き込んで」としか書かれてなかった部分が、とてもよく分かりましたよね。また、ファンとしての「聴く側」の感想でなく、実際に演奏してる側からの松尾さんの音楽への感想がいただけたのも本当に嬉しく思っています

松田さんのおっしゃる「精微で美しい松尾さんの音楽」、そして松尾さんが絶賛する松田さんの音色を是非オンエアで楽しんでくださいねo(^-^)o

 

 

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