作曲家さんが語る2011年の劇場版ポケットモンスターについて

 

2011年の劇場版ポケットモンスターの音楽録りについては録音レポの方でご紹介させていただきましたが、こちらでは作曲を担当された宮崎慎二さん、多田彰文さん、澤口和彦さんにお伺いしたお話をご紹介します。

 

 

まずは多田さんと澤口さんに…今回ポケモンに作曲という形で参加されてどうでしたか?

 

【多田さん】
とても光栄に感じています。劇場版は2001年と2003年の短編で参加させていただいてました。

今回は長編、いわゆる本編ということでお話を戴いたときは緊張しましたが、それとともに、普段から思っている自分の音楽性をこの作品に合わせながら、しっかりと表現したいとも思い、期待に胸を弾ませて臨みました。

 

【澤口さん】
そりゃー天下のポケモンですから張り切っちゃいます(笑。宮崎さんが築かれて来たポケモン世界を汚(けが)さず、また多田さんとの協力体制でいかに違う2つの個性が活かし合えるのか考えましたね。

例えばビクティニはしっかり色を出したいけど、その他はちょっと抑えておこうというような(戦闘などの重厚路線は多田さん、ビクティニ関連や街のシーンは澤口という担当分けです)

 

 

レシラムが「真実」の象徴、対してゼクロムが「理想」の象徴ということで、特別に意識したことはありますか?

 

【宮崎さん】
言葉の直接的な解釈はともかく、その棲み分けは意識しました。
しかし、結果的には 当初自分の描いた「理想」的イメージとは違ったものが出来上がり、でも、実 「 真実 」をとった形でしょうか。( しゃれてる場合か!? )

「理想」と云う言葉や、ゼクロムのキャラクターデザイン あるいは 絵コンテ から音楽のイメージを模索すると、骨太・勇壮・躍動感・スピード感・スケール感等々、曲作りの手助けとなる言葉が少なからず浮かんで来ます。

対して、「真実」の方は、荘厳・繊細・凄み・存在の深み等が重ねて要求されるところで、糸口を発見するまで随分手こずった感があります。

しかして、
『 う〜む、なかなかイケてるかも 』と、レシラム登場シーンのスコアリングに入ったものの、何かが気がかりで、ちょいと休憩のつもりが数時間固まり、絵コンテを読み直し…結果、そのモチーフは使わない! 事と相成りました。

『よっ!待ってました!』感はあるものの、前後の流れからして爽快感に欠けると判断したからです。

物語も終盤にさしかかり、しかし事件終息の兆しも見えない中、観客によりいっそうの緊張を強いてもいけませんしね。あわや物語全体が台無しになってしまうところでした。

『待ってました!』ならファンファーレやろ! と、そんな方向で書き直した次第です。

私も含めて、作家であれば当然こういったバランス感覚を持ちながら作業するものでしょうが、思い入れが強すぎると良くないのかもしれませんネ。リベンジを期します。

 

【多田さん】
深い意味で語ればどちらも「実像にも虚像にもなりうる」のではと考えています。

担当させていただいた「ビクティニと黒き英雄・ゼクロム」では、登場する人物、ポケモンすべてが善でも悪でもないそれぞれの信ずる姿そのものではないかと思い、受け手側がその思いに共感していただけるようなものとして音楽からサポートさせていただきました。

そういう意味では、一味違った出来になっているのかもしれません。

 

【澤口さん】
ゼクロムのシーンは多田さんの担当ですので控えさせていただきます。

 

 

曲作りの中でこだわられたこと、苦労されたこと、録音時のエピソードなどをお聞かせください♪

 

【宮崎さん】
今回は、『ただただ作品の完成に貢献する事』を念頭に書き進みました。
( ポケモン映画公式サイトにも寄稿いたしましたが )

当初、曲をいくら書いても書いても、中々かたちにならない苛立ちがありました。やはり、あの震災で少なからず内面にショックを受けていたんだと思います。

先に書きましたように、『こんな時だからこそ!』と 思い入れも強過ぎたのでしょう。
それが焦燥感に変わる頃、友人から『今年はそう云う役目だと思った方が良いよ』との助言を貰い、少し楽になったのを憶えています。

そう云う役目とは、今出来る事からまず始める事。でしょうか?!
確かに『火事場のまとい持ち』のガラではないし・・・

ただただと云えば多田さん!!

今回はレシラムver.の代棒とゼクロムver.のBGMを担当されました。
タイトなスケジュールに上乗せして、数々の難関やプレッシャーが存在したことは容易に想像がつきます。

しかし、そういった自らとの闘いの経緯はおくびにも出さず、レシラムver.の録音現場で 真剣に(元気いっぱい)指揮をしていただいた姿には本当に感激いたしました。

私と違って人間ができてる〜! 

えなりかずき君と同様 現世以前に人間修行の経験があるのかも知れない?って思ってしまうのですが・・・

スタジオで会った瞬間 戦友?に再会したような感覚で、おもわずハグしてしまったのですヨ ( 誰かの視線を感じて途中でやめましたが )

それと、例年の事ながらミュージシャンの皆様には本当に感謝いたしております。60曲強って、聴いてるだけでも疲れてしまいますよね。

中には 確信犯的な『しんどい譜面』も有りつつ・・・ 何卒ご容赦を。

 

【多田さん】
今回は自身の担当と共に、宮崎さんの担当された「ビクティニと白き英雄・レシラム」の代棒もさせて頂いたことで、宮崎さんの奏でられる世界の壮大なる迫力に改めて感動しました。

指揮をしながら「ふむふむ。こうなってるのか〜。すごー!!」みたいな〜(笑)

今回2作品合わせてトータル15時間余り、指揮棒を振ってたことになりますね。通算で500mlのWaterを5本空けてましたよ(汗)

筋肉痛になんてなったりしませんよ。若くはないですが。

 

【澤口さん】
曲作りにおいてはやはりポケモンの世界感を外さない事を一番に考えました。あとは多田さんに迷惑かけないことかな(笑

もともと僕は曲に個性が出過ぎるタイプなので「自分の個性が立ちすぎないように気をつけよう」という気持ちと「どうやって目立とうかな」という気持ちが常に闘っていました(笑

タイトル曲などはゲームに存在するメロディーのアレンジなので、作曲ではないことをいいことに暴れすぎちゃったかも。ホルンの藤田さんに「これ本当に難しいよ!」って言われちゃいました(さらりと吹いていただいたあたりサスガでございます。)

そして思い入れはやはりビクティニです。傷ついたポケモン達にそっと前に進もうという勇気をくれる、力をくれるビクティニ。宮崎さんもおっしゃられてましたが震災のショックの中で本当に落ち込んでいた中、ビクティニのように無償の愛を与えてくれる存在がとても光って見えました。ビクティニは本当に存在している、そして日本に力をくれるんだと不思議と信じられるんです。

映画の中にも登場するビクティニのキーホルダー、あれをなんとかゲットして肌身離さず持っていようと思います。

 

 

いかがだったでしょうか?
今回の作品に向き合って音楽が生まれるまでのことや録音現場での様子を、作家さんご本人の言葉で語っていただけたことは本当に幸せなことだと思いました。そして、こうなるともう絶対に映画館で…もしくはいつかDVDででも、必ず2本とも見なくちゃ!って気持ちになりますね(*^^*)

公式サイトにも多田さんのコメント宮崎さんのコメントがアップされてますので、ぜひぜひ合わせて読んでみてくださいね(^.^)b

 

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