〜和田薫・喚起の時V 発売記念インタビュー〜

 

 

作曲家・和田薫さんをご存じでしょうか?
劇伴(映画やアニメのBGM)では「サイレントメビウス」「疾風!アイアンリーガー」から「金田一少年の事件簿」や「学校の怪談」「犬夜叉」など数多くの人気アニメを手がけられ、その傍らでは「津軽三味線とオーケストラのための“絃魂”」「吹奏楽のための土俗的舞曲(1984年度全日本吹奏楽コンクール課題曲)」「童謡詩劇うずら」「2011年・山口国体入場行進曲」などなど、演奏会用作品やイベント用の作品にも精力的に取り組まれてる方です。

2003年11月5日にサントリーホールで「和田薫の世界 喚起の時」と題された盛大なコンサートが行われ、多くの方が和田さんのお名前を、そしてその音楽の魅力を心に深く刻むこととなりました。

その後2007年9月14日には日本音楽集団の第188回定期演奏会にて「和田薫 喚起の時U 〜20年の時を越えて〜」として和田さんの邦楽作品を集めたコンサートが行われ、多くの邦楽ファンの心を魅了しました。

右の写真はそれぞれの演奏会でライブ録音されたものをCD化したものです。購入は和田さんのオフィシャルサイトで♪

そして最初の個展から12年、いま満を持して、和田さんの吹奏楽作品の全てを詰め込んだCDと楽譜が発売になりました。その発売を記念して、今回は和田さんと吹奏楽との関わりに的を絞ってお話を伺ってきました。また、演奏活動を続けるにあたって大事な著作権についても伺ってきましたので、後半は少し難しい部分もあるかもしれませんが、ぜひ最後まで読んで心に留めていただければと思います(*^^*)

 

 

 

☆オンマウスで収録曲目が見られ、画像をクリックすると販売サイトへ飛びます☆

(実際の商品にサインはついていません…m(_ _)m)

 

 

 

 

吹奏楽との出会い

 

Q:高校に入ってから吹奏楽を始めた…とのことですが、そのキッカケは何だったんですか?

A:僕の中学時代は「かぐや姫」とかが流行ってて、その影響で僕もフォークギターをやってたんです。で、高校に入ったら軽音楽部に入りたいなあと思って、友達と一緒に音が鳴ってる部屋のドアを開けたんですね。でも、そこは実は吹奏楽部で、開けた瞬間「あ、ここ違う!」って思ったけど、先輩に「おお、来た来た!」って言って中に引っ張り込まれて「おまえ、何の楽器がいい?」って聞かれて… 男子校で怖そうな先輩がたくさんいたので嫌とも言えず、そのまま入部となりました(笑)

Q:楽器はホルンをされてたそうですが、なぜホルンを選んだんですか?

A:先輩に「楽器が2つ余ってる」って言って見せられたのが、ホルンとサックスでした。僕も一緒に行った友達もホルンなんて見たことなかったんでサックスを希望したんですが、ジャンケンの「あっちむいてホイ」で僕が負けてホルンになりました。そんな何も知らない僕にホルンの持ち方を教えてくれたのは、いま指揮者として活躍されてる時任康文さんなんですよ。

その後、ホルンをとても面白く感じて、どんどんハマって、それが作曲へとつながっていくんですが、もしあのときジャンケンに勝ってサックスになってたら、ジャズの世界へ行ってたかもしれませんね。

 

吹奏楽部時代の思い出

 

Q:和田さんのいた吹奏楽部はどんな活動をしてましたか?

A:男子校で音楽の授業なんかない学校だったので、当たり前ですが音楽の先生はいません。顧問の先生はいたんですが、ちょっとガラの悪い人たちが集まってるような部活だったので、怖がってほとんど来ませんでした(笑)

僕の1つ上の先輩のときには部員が6人しかいなくて廃部寸前だったんですが、僕らの学年が20人くらい入ったんで、何とか合奏できるようになったんですよ。でも、クラリネットがトロンボーン吹いたり、ドラムをバンバン叩いたり、夜の8時とか9時までみんな好き勝手にやってましたね。ただ、みんな本当に音楽が好きでした。

Q:吹奏楽コンクールへの出場の経験はありますか?

A:↑でお話したように、僕らの学年が入ったことでようやく人数がそろったんで出場しました。そのために他校の先生をはじめ色んな先生にお願いして指導に来ていただきました。初めてのコンクールは小編成のB部門で出たんですが、金賞だったんですよ。まあ、男子校で元気がよくて大きな音が鳴るってのが好印象だったみたいで…。で、翌年はさらに部員が増えたんでA部門で出たんですが、県大会の銀賞でした。

Q:ほかに吹奏楽部時代の思い出はありますか?

A:高校2年のときに母校の野球部が甲子園に行ったので、その応援に行きました。そのときはトランペットを吹きました。ホルンはベルが後ろを向いてるし、ほとんど「ンパッ、ンパッ」っていう裏打ちばっかりだから意味ない、とにかく太鼓とメロディーだけあればいいって感じでね。で、1勝したので校歌も吹いたんですが、甲子園で校歌を演奏するというのはとても感慨深いものがありました。

あと、ホルンにハマった勢いで独学で作曲をするようになるんですが、自分で書いた曲…初めて書いたのは金管アンサンブルで、その次はクラリネットとファゴットの2重奏で、部員のみんなに演奏してもらったのもいい思い出です。このあたりについては実は色々あったので(笑)あらためて詳しくお話したいと思います。(インタビュー第2弾は→こちら

 

「吹奏楽のための犬夜叉」に込めた思い

 

Q:今回のCDに収録されてる「吹奏楽のための犬夜叉」は原曲と音が違いますが、その意図は何ですか?

A:「吹奏楽のための犬夜叉」は中高生を対象に作ってるので、吹奏楽で中心となるB♭管やF管で吹きやすいように1音下げています。原調にすると♯系になってしまうので、中学生くらいだとちょっと厳しいかな…。また、この曲では「犬夜叉」と「かごめ」と「奈落」のテーマを使って、子どもたちがドラマを振り返りやすいようしています。テレビ放送や映画を思い出しながら吹いてもらえると嬉しいです。

余談ですが、オーケストラ版に「犬夜叉幻想(←クリックするとYouTubeに飛びます)」というのがあります。この曲では「半妖犬夜叉」しか使ってなくて、1つのテーマを展開して1つの楽曲にする…クラシックで言うところの「テーマの提示と変奏」という構成になっています。そこには僕の「犬夜叉をクラシックまで昇華させる」という思いがあるので、いつか機会があればオーケストラで挑戦してみてほしいですね。

 

音楽にずっと触れて楽しむために

 

Q:吹奏楽をやってる子どもたちに望むこととかありますか?

A:中高で吹奏楽をやった子たちが大人になって全く音楽に触れないってケースがわりと多いんですが、それはどこかで音楽への興味が「やること」だけにとどまって、もっと深いところに行ってないんじゃないかと思っています。別に生業にまでしなくとも、50になっても60になってもずっと触れて楽しんでいってもらうために、もう少し深いところで音楽を感じて好きになっていってもらえればなあと思います。

例えば、クラシックやポップスや映画音楽や民族音楽など、いろんな音楽を聴いてみて欲しいですね。聴くことの楽しさから、また演奏の楽しさも再発見できて、学校を卒業しても一般バンドなどで音楽を部活とはまた違った形で楽しんで欲しいですね。

 

著作権が支える音楽文化

 

Q:学校の部活をメインとしたアマチュアの演奏団体の中では当たり前のようにコピー譜を目にしますが、この「楽譜のコピー」ということについて少し教えていただければ…

A:「JASRAC(日本音楽著作権協会)」ではコピー行為は禁止しています。
ただ、教育的配慮として、授業内でおこなわれる行為、例えば音楽の授業で楽譜をコピーするなどは許可されています。厳密に言うと、吹奏楽部等のクラブ活動は授業ではないのでコピー行為は禁止なんです。でも個人的には、暗黙の了解で許可している部分もあります。大切な部費(団費)で買った楽譜をずっと先の後輩たちまで使い続けるためには、広い目で見ると教育的配慮ということで目をつぶっています。このあたり、難しいですよね。

ただし、A中学校が持ってる楽譜をB中学校が「○○の楽譜、持ってるんだって?貸して!」って言ってコピーするのは絶対にダメです。

作曲家がこれからも良い環境で仕事に集中できるように、せめて各校・各団体で1冊は買ってもらって、そして指導者の方には「こうやって楽譜を買ってあげることが、音楽文化を支えてるんだよ」ということも合わせてお話してもらえれば嬉しいですね。

Q:教育現場ではある程度の配慮がなされてるようですが、それ以外のところで著作権違反をするとどうなりますか?

A:著作権違反に対する処罰はとても厳しくて、懲役またはビックリするような金額の罰金を課せられることがあります(^ ^;

Q:部活などでは良い演奏をしてる団体のCDを模範演奏として皆で聴いたり、その音源を「家でも聴くように」なんて配ってるケースが見られますが、それについてはどうですか?

A:皆で聴くのはOKですよ。ただし、コピーして配るのはダメです。それをされると作曲家が干上がって、曲が書けなくなってしまいます。なので、できれば各パートに1枚ずつくらい買っていただけるのが理想ですね。そして気に入ったら、思い出の1つとして個人でも買っていただけると、ほんとに嬉しいです。

Q:自分たちの演奏を動画サイトにアップするのは違法にはなりませんか?

A:CDの音源をそのままアップするのは違法なんですが(この場合は著作権ではなく原盤権の違法に当たるんですが、そのあたりはまた改めて詳しくお話します)皆さんが演奏したものをアップするのは全く問題ないですよ。ただし、違法サイトはダメです。YouTube等、JASRACと包括契約をしているサイトであればOKなんです。

Q:やりたい曲の編成と現状の編成が合わないとき…たとえば「この曲には編成にファゴットがあるけど、うちには楽器がない」なんて場合は、別の楽器で代用したりカットするなど、現場で勝手に自分たちの編成に合うようにアレンジしてもいいんでしょうか?

A:個人的には、教育的な現場ではファゴットがなければテナーサックスやユーフォニアムなんかで、オーボエがなければトランペットにミュートかけるなど、そこにある楽器で代用するのもアリだと思うんです。ただ、コンクールでは最近はそういう代用はダメということになってますね。また作曲家によっては憤慨する人もいます(苦笑)。

あと、この機会に考えていただきたいなあと思うのは、たとえばオーケストラでモーツァルトやベートーヴェンをやるときに、楽器がないからって別の楽器で代用したりはしないでしょう。そこはもう作品へのリスペクトとして、絶対に触らないと思うんですね。なので、まずは音楽に触れるとか親しむという意味では別の楽器で代用してもいいけれども、そこから先はその楽器がどうしても用意できないとなると、もうその楽器が編成に入ってない曲を探すのがいいかなあと思いますね。

 

 

これから「喚起の時V」に収録されてる曲に挑戦する皆さんにメッセージを♪

 

 

 

少し硬いお話もありましたが、和田薫さんが吹奏楽を始めたキッカケなど「吹奏楽あるある」なところもあって楽しんでいただけたのではないでしょうか?

今後は和田さんがこの吹奏楽部時代から何がキッカケで作曲するようになったのか、どうやって東京音大を目指したのか、巨匠・伊福部昭さんに初めて出会ったときのことから現在に至るまでのことなど、広く深く聞かせていただいたインタビュー記事をアップ予定です。どうぞ、お楽しみに(*^^*)

 

2015年6月4日 

 

 

インタビュー第2弾は→こちら

 

 

 

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