VITRO 2nd Concert in OSAKA

 

「クリスタルフルート」検索で来られた方へ

このサイトは、スタジオミュージシャン・旭 孝さんのお仕事をレコーディングレポートを中心にご紹介し、
少しでもスタジオワークに興味を持って応援していただければ…ということを目的としています。
これからの文中に登場する「旭 孝さん」については、ぜひ「
笛のおっちゃん」のページをお読みください。

 

 

ガラスの横笛「クリスタルフルート」に魅せられて集まったメンバーにより、2002年12月に結成されたアンサンブルユニット「VITRO(ラテン語で‘ガラス’の意)」。のVITROの2回目の自主企画コンサートが、大阪市中央区北浜のアイルモレ・コタで行われました。ちょうどこの約1ヶ月前に、東京でのクリスタルフルートデュオを聴かせてもらったばかりの私は「2本が4本になったら、どんな音の広がりや響きが味わえるんだろう〜♪」と、とてもわくわくしながら、この日を待ってました(*^-^*)

とはいえ、今回の会場は徳島からの高速バスが着く大阪駅からわりと近いはずなのに、地下鉄を2回も乗り継がなければいけないってことで、私は何日も前から違う意味でもドキドキ…。事前にねずさんに電話で説明してもらい、VITROのサイトにあった地図もプリントアウトして持っていったにも関わらず、北浜駅の29番出口から出てすぐに「ああ、(東京に引き続き)大阪の空も小さいなあ…看板はどこかなあ…」なんて上ばっかり見て歩いたら、しっかりお店を通りすぎてしまいました(+_+)

そんなこんなでしたが、何とか4時半すぎには無事に到着。会場となるホールに足を踏み入れた途端、その素晴らしい空間に思わず目を見張りました。高い吹き抜けがあるホールの壁はコンクリートの打ちっぱなしで、見るからに響きそう。その両サイドには天井まで続く大きな窓があって、傾きかけた日の光が穏やかに、でも目いっぱい降り注いでいます。開演までに、その光景を撮っておけばよかった…と、今とても悔やんでます(>_<)ヽ

 

 

第1部のプログラム

序曲
ピカデリー                
「マ・メール・ロア」より         
  ・眠れる森の美女のパヴァーヌ
  ・パゴダの王女レドロネット
野に咲く花のように          
この広い野原いっぱい        
たんぽぽぽ               
口笛吹きと犬              
雨の精のダンス            
ゆきがとける              
くじら                   
「シェエラザード」より  
        

E..サティ
M.ラヴェル    


小林亜星
森山良子
本谷美加子       A.プライヤー
中村佐和子 
松下耕
松下耕
リムスキー = コルサコフ

 

 

さて、いよいよ開演です。

さっそうと登場した4人の色とりどりのドレスに思わず「うわぁ〜♪」と声を上げそうになりましたが、音が鳴り出した瞬間、逆に思わず息をのみました。

いえ、会場の響きを上手く利用した4人のクリアで豊かなハーモニーに私が飲み込まれたので、息をするのを忘れてしまったって感じでしょうか。

あ、ギターの人の上にある透明の棒状のものは、実は十字架なんですよ♪


1曲目の「序曲」にはスネアドラムが入ってて、この会場とこの編成ではちょっとスネアは強すぎるかな〜とも思ったりしたのですが、コンサートの幕開けにはふさわしい、華と活気のあるハーモニーになって良かった気がしました。

その後、「たんぽぽぽ」という曲の前に「この曲を聴くと、お茶が飲みたくなるかも…です」と言ったお話があったので何かと思って聴いてると…何と、サントリー「のほほん茶」のCMで使われてる曲でした。

ギターと木琴が入って、それはそれは可愛かったですよ。原曲は作曲の本谷さんがオカリナで演奏されてるようです。


「野に咲く花のように」は、パートソロを上手くつなぎ合わせた、流れるような美しいアレンジになってました。

Dピッコロは明るくハッキリと、同じピッコロでもCピッコロは少し丸みのある音で、Gフルートは少しハスキーだけど深くて味のある音、Dフルートは貫禄のある深くて柔らかな音色…と、それぞれの楽器の音色を楽しめて、なかなか良かったですよ。

思わず、一緒に歌いたくなるような、優しいハーモニーも魅力的でした♪


そうそう、「口笛吹きと犬」は、タイトルだけではピンとこない人も、聴けば絶対に「ああっ!」って言うくらいの有名な曲です。陽気に口笛を鳴らしながらリズミカルに歩く飼い主と犬…みたいな情景が思い浮かんでくるような、ドラムの縁を叩く「リムショット」という奏法を取り入れた楽しいアレンジになってました。ピッコロの明るくハッキリした音色がいかにも口笛らしく、そのバックのドラムが何ともコミカルで、とても楽しい気分にさせてもらいました。

こちらは、全員がF管フルートを使っての演奏。曲は、松下耕の合唱曲「ゆきがとける」と「くじら」です。まるで本物の同声合唱を聴いてるかのような、まろやかで穏やかで、素敵な演奏でした。

ぜんぶ同じ楽器にするということは、音域的にも音色的にもかなりの制限を受けるかと思うのですが、そこをしっかり捉えた上手い選曲で、クリスタルフルートの新たな魅力に気付かせてもらえた1曲でしたよ。

ほんと、あんな華奢なガラスの笛で、色んな表現ができるんですね〜♪

ここで30分の休憩となりました。コンサートの合間の休憩が30分なんて、長いなあと思うでしょ? 実は大きなチョコケーキと紅茶が振る舞われたんです。前半の演奏を思い出して、それをじっくり噛み締めながらのティータイムは、言葉では言い尽くせない豊かな時間だと言えますね。

会場の片隅には試奏コーナーが設けられ、何人もの方が試されてました。でも、その皆さんの上手なことと言ったら…きっと、何らかの形で笛に携わってる方たちなんでしょう。ほんと、びっくりするほど上手かったです(^^ゞ

第2部のプログラム

「母をたずねて三千里」より
  ・草原のマルコ
カゼノネ
バスダンス ラ・ブロス
マラゲーニャ
エストレリータ
「ハウルの動く城」より
  ・人生のメリーゴーランド
オンリータイム
「ガンダム SEED」より
  ・暁の車

坂田晃一

yae
P.アテニャン
E.レクォーナ
M.ポンセ
久石 譲

エンヤ
梶浦由記


第2部はガラッと雰囲気を変えて、黒い衣装に赤い譜面というカッコいいスタイルでの登場となりました。

ねずさんのMCによると「第1部は‘のほほん’で、第2部は‘パッション’を意識してる」そうです。

私は午後2時からの公演は聴けてないので何とも言えないところもありますが、この第2部の衣装は、夜の帳が降りてきてスポットライトを浴びることで、より魅力的になったのでは…と思いました。


さて、こんな感じで始まった第2部の最初の曲は「母をたずねて三千里」から「草原のマルコ」。そう、あの「遥か〜草原を〜♪」という歌い出しのOPですね。ちょうど今、関西地区では(徳島でも見えてます♪)朝8時から「母をたずねて三千里」を再放送してるので、子供のころを懐かしんで、また大人になってから新たな気持ちで、この曲を聴いてる人も多いかと思います。そんな人たちにとっては、今回のプログラムの中では大きな期待を寄せる曲の1つでしょうし、そのうえ私の場合は、私のHPのメインコンテンツにもなっている「旭 孝さん」がこのオリジナル曲のケーナを吹いているということもあって、胸を高鳴らせながら曲の始まりを待ちました。

始まってみると、ただただ、もううっとりするばかりで、言葉になりません。とてもクリスタルフルートとは思えないようなフォルクローレっぽい節回し、まさに旭さんがケーナで吹いてるときのような「こぶし」を効かせて、さらに4人でハモらせることでふくらむ豊かなマルコの世界…まるで歌ってるかのような伸びやかな音色に、胸がぎゅ〜っとなりました。それと同時に、つくづく「どんな楽器も、まるで歌ってるかように演奏する」というのは、本当に大事なことだなあとも感じました。やっぱり、聴衆への訴える力が大きく変わってきますよね。他の幾つかのサイトでも「胸が熱くなった」というような感想がたくさん書かれてましたが、それくらいメッセージ性の強い演奏でした。


今回のプログラムの中には「人生のメリーゴーランド」や「オンリータイム」のように、東京公演のときと同じ曲もあったのですが、編成が違ったり、奏者や会場の雰囲気が違うということで、また別の感動をたくさん味わうことができました♪

第2部は「バスダンス ラ・ブロス(フランス)」「マラゲーニャ(スペイン)」「エストレリータ(メキシコ)」と、音楽で世界旅行をしたような気になれる、バラエティに富んだプログラムも良かったと思います。


コンサートのラストを飾る「暁の車」のために、ピアノの前にスタンバイする江藤さん。

この写真では分かりにくいんですが、全体が透明で、とても美しいクリスタルピアノなんですよ(‘クリスタルピアノ’の字のリンク先を参照してください)。まさに、このコンサートにピッタリです。


私はこの「暁の車」という曲は初めて聴いたのですが、「機動戦士ガンダム SEED」というアニメの挿入歌だそうで、番組で使われたのはわずかに2回。でも、とても感動的な、それこそアニメ史上に残るような名シーンで使われた曲だそうです。死を覚悟で戦場へ旅立つ人を、やりきれない気持ちで見送る…という歌詞の曲で、後半はその堪えきれない切なさややるせなさがあふれてしまうような盛り上がりを見せます。

前半は3人のフルートと静かなギターが奏でる哀しい心の叫び、そこへピアノが加わり、ギターも激しさを増していき、さらに力強いボンゴが加わって、押さえきれない哀しみや怒りを表します。それらが1つになったときの、あの熱く狂おしいメロディは…ほんと、聴いてる方の目頭が自然と熱くなってしまうような大曲でした。レポのために…と、客席の後ろでカメラを構えていたのに、ただの1枚も演奏中の写真が撮れてないのがその証拠です。

演奏が終わった途端、客席からは大きな拍手が湧き起こり、ずっと弱まることなく鳴り響いてました。それを満面の笑顔で浴びていたねずさんたちが演奏してくれたアンコール曲は「なごり雪」。皆で、もうすぐそこまで来てる春を思いながら、しっとりと聴きました。こうして、VITROの2回目の公演も、大成功を収めることとなったようです。

左から、Dフルートを担当した佐藤実希子さん、Dピッコロを担当した福谷一美さん、Gフルートを担当した下倉明子さん、Dピッコロを担当(ときどきCピッコロと持ち替え)した江藤佳美さん、パーカッションを担当した村田真稚恵さん。

午後2時からと5時からの両公演を大きな拍手とともに終えて、充実感あふれるいい笑顔です。ギタリストさんは「ネット上に写真が載るのは恥ずかしい(>_<)ヽ」とのことで、女性5人による美しい記念写真です(*^-^*)

今回のコンサートには、このまえ東京で共演した斉藤暢彦さんも応援に駆けつけてて、コンサート後の打ち上げ会場では、その健闘を力強く称えてました。そのときのショットをどうぞ♪

その後、私の携帯に元N響首席奏者の小出信也さんが電話してきてくださって、むかし教えたことのあるねずさんと何十年かぶりの再会(?)を果たし、その健闘を称えてました。また、相次いで旭 孝さんからも電話があり、同じく健闘を称えて「次回は是非〜♪」との約束を交わすという、本当に賑やかな打ち上げとなりました。


今日に至るまでは、曲選びに始まって、その曲の編曲、JASRACへの申請、パンフの作成に会場の設営、当日スタッフの確保…などなど、本当に色んな苦労があったのではないかと思います。それら1つ1つと大事に向き合って、乗り越えていって、会場いっぱいの大きな拍手で終えたこの日のコンサート、皆さん感慨無量だったでしょうね。その思いを糧に、また次へ向かって進んでいってほしいなあと思いながら、私は帰路につきました。

2005年3月13日

 

 

        

 

 

 

 

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