松尾早人さんの仕事場探検
2015年2月10日。作曲家・松尾早人さんのお宅にお邪魔してきました。実は松尾さんのお宅にお邪魔するのは今回で2度目。前回は2013年10月に私とフルートの金子奈美さんとchocoちゃんこと元インペクの張替夏子さんの3人で、今回は私だけだったんですが、そのときと今回と2度に渡って松尾さんの仕事場を見学させてもらったので、私の超ド素人目線から見て分かったこと、感じたことをまとめたいと思います(*^^*) |
松尾さんちの廊下には、これまで担当された数々の作品のCDやDVD、それにキャラクターグッズなどがたくさん、それもとても綺麗に飾られてて(ついでに何故か某運送会社のミニカーもw)、chocoちゃんや奈美ちゃんと歓喜の声を上げました(*゚▽゚*) 左の写真をオンマウスにすると画像が切り替わりますが、こんな感じで何年たっても大事にされてるって、ファンとしてはとても嬉しいですよね(*^^*) |
前回も今回もお邪魔してしばらくは、同じく作曲をされてる奥様を交えての歓談。奥様は最近は携帯アプリの音楽のお仕事をされてるほか、たまに松尾さんの音楽のパート譜を作るお手伝いなんかをされてるそうです。せっかく奥様にお会いできたんだから、そうしたお仕事の話をもうちょっとちゃんと聞けばいいのに、スイーツや好きな海外ドラマの話なんかに花を咲かせて完全に普通の女子会みたいになってました。しかも、松尾さんに会いに来たはずなのに、ときどき松尾さんの存在を忘れて奥様と話し込んでしまったり…(笑)いやあ、楽しかった〜!\(^o^)/
このまま女子会だけで終わりそうな勢いだったのを、気を奮い立たせてようやく仕事場探検へ…こちらが松尾さんの仕事場です。オンマウスでもうちょっと広めに撮った写真になりますよ♪
オンマウスで見られる方の写真は前回のときのものなので、深夜に撮ったものです。照明の感じがとても素敵だったんで、そうした時間帯の違いによる雰囲気の違いも楽しんでいただけると嬉しいです(*^^*) あ、松尾さんの背後にあるスピーカーは、下の四角くて黒いのがムジークのRL906で、上の丸くて小さいのがタイムドメインって言うんだそうですよ♪ あと、一緒に映ってるわんこは、松尾さんご夫妻がほんとの息子さんのように大事にしてるムーグくんです。残念ながら2014年のクリスマスに病気で若くして亡くなってしまったんですが(とても賢く人懐っこいわんこで今回も一緒に遊べると思ってたのに、ほんと残念で寂しくて…)ムーグくんを抱っこしてるときの松尾さんは表情が一段と優しくなっていい感じだし、私にとってもムーグくんと会えたことは大事な思い出なので使わせていただくことにしました。 |
さて、いよいよお仕事の話へ…なんですが、私があまりに素人すぎて、何をどう聞いたら分かりません。これは、前に作曲の山下宏明さんの仕事場探検をさせてもらったときと全く同じ状態です。山下さんちの探検をさせてもらってから丸2年も経つのに、何の成長もしてないなんて自分でも呆れます(´-ω-`;) でも、とりあえず「作曲ってどんなふうにやるの?」みたいなところから聞いてみましたよ。そんな漠然と聞かれても松尾さんもさぞ返答に困ったかと思うんですが、まずは「何か思いついたフレーズがあったら、ここにメモっぽく書きとめて…」と紙の五線紙を見せてくれました。こういうのを「スケッチする」って言うんだそうです。私なんかは「スケッチ」って聞くと何となく絵の方を想像してしまうんですが、音楽でもそんな言い方をするんですねえ。 この「スケッチ」ですが、松尾さんの場合はそのとき思いついた数小節だけ書きとめて、書けてる分だけちょっとずつオーケストレーションとして打ち込んでるのかと思ったら、大体は1曲を最後まで手で書いちゃうんだそうです。それは、数小節だけ手書きして、それを打ち込んで、またちょっと時間を空けて思いついたのを手書きして、その次に打ち込んで…なんてやってると、そのフレーズを思いついたときの最初の気持ちが分からなくなっちゃうんだそうです。 これを松尾さんは「お料理に例えるとね、ちょっと料理して洗って、また料理して洗って…なんてやってると大変でしょ。ちゃんと料理してから食べるってのがいいじゃない?」って話してくれました。松尾さんのこうした私にでも分かるような身近なものに例えてくれる話し方にはいつもほんと感心しますし、松尾さんの優しさが目いっぱい表れた素敵なところだと思ってます(*^^*) ま、このスケッチと打ち込みの順については、もちろん人それぞれってところもあるかと思います。クラシック系の人はわりと最後までスケッチしてから打ち込む人が多いらしく、逆にリズム系の人はもうスケッチなんかなしでいきなり打ち込んだりもしてるそうですよ。そういう松尾さん自身も、オケのときは先にちゃんとスケッチを完成させるけど、リズムのときはもうそのまんま打ち込んだりしてるそうです。曲によって作り方も違ってくるみたいですね。 |
次はどんな音源があるか聴いてみようってことになったんですが、ここでトラブル発生! 左のは発売されたとき「まるでゴミ箱みたいだ」と話題になった、Mac Pro。 これが松尾さんちにもあったんですが、どうもこれと松尾さんちの機材、もしくは機材の中に入ってるソフトとの相性が悪いらしく、音を再生しようとすると「プツッ」というノイズが出たり、再生した音が止まらなくなったりというバグが何回か起きてました。 |
私がいたほんのわずかな時間だけでも何回もバグが起きてたんで、ほんとにお仕事するときにもこんなにバグってたら作業が進まんし、何よりストレスですよね。 松尾さんちの仕事場探検を終えたあとは松尾さんと2人でエンジニア&トロンボーン奏者である吉田俊之さん出演のライブ(LUCKY PAO Session〜吉田・包国合同還暦式〜)に行ったんですが、そこにいた松尾さんの後輩である作曲の岩崎琢さんともこの話をしてました。でも、どうも岩崎さんちのはバグってないみたいですね。う〜ん、何が原因なんでしょうねえ。 |
この縦に2つ積み上げられてる黒い箱の中には色んな楽器の音源が入ってるんだそうです。 下の箱にはオケで使う楽器の音源が、上の箱にはそれ以外が…ってことでしたが、それ以外って何だろう? ピアノとか?リズム楽器とかかな? ところで、こうしてレポのために写真を加工してて初めて気づいたんですが、写真の左端にはベースのネックらしきものが写ってますよね。 これ何?松尾さんが弾くのかな?聞けば良かった…orz |
こうした音源はこんな箱の中に入ってるだけではどうにも使えないので、まずはPCの方に呼び出してあげないといけません。そして楽譜の上にある色んな旋律に音色をつけていくとう作業があるようなんですが、それをいかに効率よくするかということについて松尾さんが話してくれたのを、動画そのまんまで載せたいと思います♪(手ブレしまくっててゴメンなさい…)
なるほどねえ…って感じですよねえ。 |
さて、ここからは「打ち込みってどうやるの?」っていうド素人な質問に「じゃあ、まずホルンはこういうメロディでいこうか」「ホルンがこう来たから、弦はこんな感じで…ん?管よりもほんのちょっと弦が早く出てきた方がいいから、こうして弦の頭を前にずらせて…」「でも、弦が入るとホルンの音が聴こえにくくなったから、ちょっとホルンの音の頭を強めてみようか…」「そしたら次はスネア(ドラム)を入れて…あ、最初は小さめに入って(音量の)ピークをここに持ってきたいから、こうやって音量を調節して…」 と、実際に作りながら説明してくれました\(^o^)/
そして、この棒グラフを音にしてみたのがこちらです
私に説明しながらという手間を含めても、わずか20分くらいでもうこんなしっかりとした曲になってて、ほんとビックリです。何か、このまま冒険が始まる系のシーンとかに使えそうですよね!(*゚▽゚*) |
ところで、先ほどの棒グラフみたいなのがあった画面(シーケンサーの画面だそうです)ですが、打ち込み音楽として作品に使うならあれでよくても、生オケを使って録音するとなるとそうはいきませんよね。指揮者やミュージシャンの人たちにも分かるように、ちゃんと楽譜にしなければいけません。 |
いま出てきた「シーケンサー」ですが、これも私みたいな一般人には「何のこっちゃ?」ですよね。でも、これに関しては、前に関 美奈子さんが譜面制作について語ってくださったページの最後に用語解説がありますので、そちらを参考にしてくださいね。そして、この関さんのお話もとても面白いんで、いつかそちらも読んでいただけたらなあと思います♪ それにしても、譜面にするのがまさか1音ずつの手作業だなんて…こんなにコンピュータが発達してきてる世の中だから、左のモニターから右のモニターにデータをぽ〜んとコピペしたら勝手に綺麗な楽譜になってくれるのかと思ってましたよ…。 で、そのあたりのことをもう少し詳しく聞いてみると、楽譜にできなくはないけど変な楽譜になるんですって。変な楽譜というのは、たとえば松尾さんが作ったのは「スタッカートの4分音符+スタッカートの4分音符…」という音楽なのに、ソフト上の譜面の方では「16分音符・付点8分休符+16分音符・付点8分休符…」みたいになっちゃうんだそうです。こうなると、音の数は同じでも、音楽としては全く別ものになってしまいますよね。何かこうした表記上の不具合がいっぱい起こるんで、それをちまちま直していくよりも、もう最初から自分で書き込んでいった方が早いんだそうです。 うん、まあそれは確かにそうでしょうねえ。でも、でも、あまりに精微な作業の連続で、聞いてるだけで気が遠くなりそうでした。映画や2時間ドラマだと30〜40曲くらいかなあ。テレビアニメなら60〜80曲くらい作って当たり前みたいな世界の裏側では、こんな大変なことをしてたとは…ほんっと、これからはもっともっと大事に聴かなきゃって思いましたよ(>_<) |
まだまだ聞きたいことはいっぱいあったんですが、ライブの時間が迫ってきたんで仕事場探検はこれで終わり…。 私にとっては感動や驚くことがあまりにも多くてちょっとクラクラしかかってたんで、そのベストタイミングで奥様が持ってきてくださった美味しいケーキと紅茶は、ほんと体に染みました(*^^*) もっと色んなことを教えてほしいってのももちろんあるけど、また奥様とおしゃべりしたいってので仕事場探検の第3弾を申し込んでしまいそうです(* ̄∇ ̄*) |
いかがでしたか? 余談ですが、もう3〜4年前になるかなあ…松尾さんが私に曲を作ってくれたんですね。しかも2曲も! 松尾さんが作ってくれたという2曲ですが、1曲はうちの娘が決めた「好きな和音」を元にした1分15秒のもの。もう1曲は私の朝の様子(まだ暗いうちの起床→てんやわんやのお弁当作り→子どもたちを送り出す→昇る朝日を見てホッと一息)を表現した5分もの交響詩。2曲目のなんかストーリーだけ聞くと超ほのぼの系ですが、繊細さと重厚さが複雑に絡み合ったとてもカッコ良くて美しい曲なんですよ。聴かせた友達に「あんた、どんな壮大なお弁当作ってんの!?」ってツッコミが入ったほどです(笑)1分ちょいの方は携帯の着信音に、交響詩は携帯の目覚ましの音楽にと、ずっと大事に使ってます(*^^*) そういえば、娘が学校でもらってきた「和音を作ってみよう」って宿題に、こんな素晴らしい例を作ってくれたこともありましたっけ…ほんと松尾さんには感激させられっぱなしです(*≧艸≦)
最後に、その1分ちょいの方の前半だけを、娘が書いた和音のメモと一緒に載せておきますね♪ (この31秒くらいからを着信音にしてます)
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ピアノの松田真人さんが「HELLSINGのピアノ曲について」や「神のみぞ知るセカイのピアノ曲について」「神のみぞ知るセカイのピアノ曲について 〜その2〜」で熱く語ってくださってるように、数多くの彩り豊かな引き出しを持ってる松尾さん。そうした音楽面だけでなく、お人柄もほんと素晴らしくて、これからも全力で応援していきたい作曲家さんのお1人です(*^^*)
2015年3月13日 |
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